株式投資の税金

【注意】外国株式や外貨建てMMFを利用した節税方法に対する国税庁の認識とリスク

外国株式や外貨建てMMFを利用した節税方法

最初に結論を書くと、個人的にはおすすめしません

この話をSNSでするとザワザワする(察してください)とても有名な方法なので、問題点の指摘にとどめます。

※この記事ではあえて方法の詳細は解説せずに「ふわっ」とした感じでいきます。

国税庁は「課税上の弊害」として認識

国税庁が2016年(平成28年)6月28日に出した通達の趣旨説明では、次のようなことが書かれています。

※法律に対する国税庁の解釈が「通達」で、その通達の細かい説明が「趣旨説明」です。

外貨建ての株式等の取引後、邦貨に転換せずに外貨のまま売買を複数回継続し、実体のない譲渡損失を計上するなどの課税上の弊害が生じる場合にも、所得税基本通達57の3-2によっているが、この点についても明らかにしたものである。

出典:国税庁「【PDF注意】「『租税特別措置法(株式等に係る譲渡所得等関係)の取扱いについて』等の一部改正について(法令解釈通達)」の趣旨説明(情報)

「複数回継続」して「実体のない譲渡損失」を作る行為を「課税上の弊害」として問題視しています。

通達は国税庁が税務署を縛るものなので、税務調査でこの通達をもとに

「原則どおり計算します」

と言うことは可能です(言うかどうかはともかく)。

ちなみに同じ趣旨説明の中で「ボロ株・低位株の売買で端数切上げ計算を利用した節税方法」も問題視されています。

関連>>【注意】ボロ株・低位株の売買で端数切上げ計算を利用した節税方法と問題点

国税庁が通達の趣旨説明に「課税上の弊害」と書くケースは少ないですが、あまりに目立つ2つの悪用事例について警告しておきたかったのかもしれません。

特定口座のルール変更も背景

この通達・趣旨説明の背景は、2013年度(平成25年度)税制改正です。

いわゆる「金融所得課税の一体化」が行われ、2016年(平成28年)1月1日から「公社債・公社債投資信託(MMF等)」に関する税金のルールが「上場株式・投資信託」とそろえられました。

出典:楽天証券「2016年1月から、制度が大幅改定!証券税制

これは同時に「特定口座」のルール変更でもあります。

特定口座の対象商品が「上場株式・投資信託」だけでなく、「国内債券・外国債券・MMF・外貨建てMMF」が含まれたことで、損益通算が可能になりました。

もとから「外国株式」で問題になっていましたが、2016年から「外貨建てMMF」も利用できるようになり、国税庁としては、余計に警告しておきたかったのかもしれません。

最大リスクは?

為替差益の存在

国税庁の質疑応答事例に次のようなものがあります。

預け入れていた外貨建預貯金を払い出して外貨建MMFに投資した場合の為替差損益の取扱い

【照会要旨】
 米ドル建で預け入れていた預金10万ドルを払い出し、その全額を外貨建MMF(米ドル建公社債投資信託)に投資しました。
 この場合、その外貨建MMFに投資を行った時点で預金に係る為替差益を所得として認識する必要はありますか。(略)

【回答要旨】
 為替差益を所得として認識する必要があります。

出典:国税庁「預け入れていた外貨建預貯金を払い出して外貨建MMFに投資した場合の為替差損益の取扱い

例えば1ドル110円でドルを買い、しばらく置いていたら円安で1ドル130円になったので、外貨建MMFを買ったらどうなるか、という話です。

結論としては、130円-110円=20円を為替差益として認識です。

 照会のように、外貨建の預金をもって外貨建MMFに投資した場合には、新たな経済的価値(その投資時点における評価額)を持った資産(公社債投資信託の受益権)が外部から流入したことにより、それまでは評価差額にすぎなかった為替差損益に相当するものが所得税法第36条《収入金額》の収入すべき金額として実現したものと考えられますので、当該外貨建MMFの投資金額の円換算額とその投資に充てた外国通貨を取得した時の為替レートにより円換算した金額との差額(為替差損益を所得として認識する必要があります。
(略)
 なお、外貨建MMFの譲渡による所得の金額を計算する際、当該外貨建MMFへの投資時の為替レートによる円換算額をその取得に要した金額として所得を計算することになります。

出典:同上

つまり、外貨建てMMFの購入時に一度為替差損益を認識し、売却時には購入時の為替レートをベースに計算するとなっています。

この件については、過去に税務調査で申告漏れが指摘されています。

最大リスク

今回の節税方法も

「なんかがちゃがちゃしたら、損失ができてラッキー」

ではなく、

為替差益の発生を確定申告していないだけ

とも言えます。

だから私が考える最大リスクは

為替差益について課税します。雑所得総合課税・累進税率です」

と税務調査で過去にさかのぼって申告漏れを指摘されることです。

20%の譲渡益を消して、最高税率55%の総合課税を食らったら、笑えませんね。

まあそこまでやるかは分かりませんが、「最大」リスクということにしておきます。

最後に

そもそも計算不能では?

という指摘もあるかと思います。

私もそう考えます。

特定口座という仕組みを使うとおかしくなりますね。

とはいえ、計算できるかどうかと、課税上の弊害があるかどうかは別問題です。

ちなみに「税務署に聞いて大丈夫」という人がいますが、税務調査で調査をする人とは別人なので、あまり参考になりません。

というわけで、個人的にはおすすめしません

関連>>【注意】ボロ株・低位株の売買で端数切上げ計算を利用した節税方法と問題点

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