今回は「日本の上場株式(個別株)」を「配当金」メインで持つ場合に、個人口座と法人口座のどっちで持つのが得かについて記事にしました。

個人口座と法人口座の比較
- 日本株で売却益
- 日本株で配当金←ココ
- J-REITの分配金
- 米国株で売却益
- 米国株で配当金
最初に結論を書くと次の通りです。
個人口座がおすすめの人
- NISAを利用する人
- 会社の利益が多い人
- 課税所得900万円以下の人
- 高配当株に分散投資をしたい人
法人口座がおすすめの人
- 会社の経費と相殺する目的の人
- 収益の柱を増やしたい人
基本的には「個人口座」がおすすめ
個人口座で持った方が得な人
まずは個人口座で持った方が得な人について見ていきましょう。
1.NISAを利用する人
個人口座では「NISA(少額投資非課税制度)」が利用できます。
この税金が非課税になる仕組みは、法人口座にはありません。
今回は日本の上場株式への投資なので「一般NISA」です(つみたてNISAは使えません)。
<個人口座>
- 特定口座:課税(一律20.315%)
- 一般NISA:非課税
一般NISAを利用すると年間120万円まで投資でき、5年の間にもらう配当金は非課税です。

また、2024年から「新しいNISA」が始まりますが、こちらは少し減って年間102万円まで投資でき、5年の間にもらう配当金は非課税です。
細かい制度の話はさておき
- 年間で100万円前後くらいしか投資しない
- つみたてNISAを利用しない
なら一般NISA(2024年からは新しいNISA)で十分です。
2.会社の利益が多い人
会社の利益が多い人も、個人口座がおすすめです。
個人が上場株の配当金を受け取るときは、3つの選択肢があります。
- 申告不要
- 申告分離課税
- 総合課税

まずは「申告不要」と「申告分離課税」の場合ですが、いずれも税率は約20%です。
<税率と計算方法>
- 個人口座:一律20.315%(申告分離課税or申告不要を選択)
- 法人口座:約23%~34%前後(全部まとめて計算)
一方、会社で上場株の配当金をもらうときは最低でも約23%(法人税・法人住民税・法人事業税)の税金がかかります。
さらに他の利益とまとめて計算するので、会社の事業が儲かって利益がたくさんあれば、税率は約34%です。
個人で持つより1割以上税金の負担が増えてしまいますね。
※所得税額控除の話は省略します。
3.課税所得900万円以下の人
課税所得※900万円以下の人も個人口座がおすすめです。
※課税所得=収入-経費(会社員は給与所得控除)-所得控除(配偶者控除、基礎控除など)
給料で年収1,000万円以下の人はふつう対象です。
先ほどは「申告不要」と「申告分離課税」を紹介しましたが、いずれも税率は約20%です。
今度は所得税について3つ目の「総合課税」を選んで「配当控除」という仕組みを使うと、税率が20%未満になる場合があります。

特に「令和4年分」までは、パターン3(所得税で総合課税、住民税で申告不要)を選ぶことで、課税所得900万円以下の人は税率を20%未満(5%~18%)にできます。
注:令和4年度税制改正で「令和5年分」からパターン3が選べなくなりました。
その場合でもパターン2(所得税・住民税ともに総合課税)を選ぶと課税所得695万円以下の場合に税率が20%未満(7.2%~17.2%)になります。
一方、法人口座でも上場株式の配当金は「受取配当益金不算入制度」というものが使えます。
具体的には配当金の20%に税金がかかりません。
法人口座の税率は約23~34%前後なので、税金がかかる部分が80%と考えると
- 税率×80%=18.4%~27.2%
とやや減るものの、個人口座に比べるとまだ高いです。
4.高配当株に分散投資をしたい人
最後に、日本の高配当株に分散投資する場合です。
良い日本株高配当ETFがない(微妙な銘柄も含まれている)ので、自分で個別に買って50~80種類の株に分散する方法があります。

もし法人口座でたくさんの株に分散投資をすると、会計ソフトに入力しないといけないので管理が大変です。
日本の高配当株に分散投資をするなら、個人口座でたくさんの銘柄に分散して持つのが良いでしょう。
「特定口座」で投資すれば、自動的に証券会社が計算してくれます。
配当金の受け取っても、銘柄の入れ替えをしても、特にすることはありません。
法人口座で持った方が得な人
次は、法人口座で持った方が得な人を見ていきましょう。
1.会社の経費と相殺する目的の人
個人で配当金と相殺できるのは、基本的に「上場株式(米国株もOK)の売却損」だけです。
一方、法人口座は上場株式の売却損はもちろん、「会社が支払う経費」も配当金と相殺できます。
例えば個人事業主がマイクロ法人を作って二刀流をするケースで、これが活用できます。
マイクロ法人に上場株を持たせて、配当金と経費(役員報酬と社会保険料の会社負担分)を相殺します。
・・・問題点としては、既に説明したように良い日本株高配当ETFがない点です。
個別に50~80種類の日本株に分散するのに法人口座は向いていません。
自分が「これだ!」と思う日本の上場株式(個別株)がある場合はともかく、そうでなければ
- J-REIT(例:指数連動型)
- 米国高配当ETF(例:VYM,HDV,SPYD)
を持った方が管理がラクです。
2.収益の柱を増やしたい人
もう1つ、本業以外に会社の収益の柱を増やしたいときに使えます。
本業が順調なときは税金の負担が個人よりやや重いというデメリットはありますが、本業が悪いときには貴重な収入源になります。
ただし、3,000万円投資して利回り4%でやっと年間120万円(月10万円)です。
収益の柱にするには「かなりの金額」を投資する必要があります。
よほど使わない資金がない限りは、微妙なところです。
ムリに株式投資をするより
- 別の事業(収益の柱)を作るために投資
- 融資を受けて不動産投資(家賃収入)
も検討したいところです。
参考1:株主優待
個人口座だけでなく、法人口座も開設することで、個人・法人の両方で株主優待を受けられるというメリットもあります。
例えば最小単位の100株保有で1,000円相当のQUOカードがもらえるなら、個人と法人で100株ずつ保有して二重で受け取れます。
注:株主優待目的の投資が良いかどうかは別の話です。
参考2:上場株の含み益は?
「法人口座で上場株を持つと、期末に含み益に課税されるのでは?」
という疑問を持つ人もいるかもしれません。
ただし、ほとんどの中小企業では、貸借対照表の「固定資産」の「投資その他の資産」の中で「投資有価証券」としていて、含み益に課税はありません。
まとめ
「配当金」メインなら、個人口座と法人口座どちらで「日本の上場株式」を持つのが得かについて見てきました。
個人口座がおすすめの人
- NISAを利用する人
- 会社の利益が多い人
- 課税所得900万円以下の人
- 高配当株に分散投資をしたい人
法人口座がおすすめの人
- 会社の経費と相殺する目的の人
- 収益の柱を増やしたい人
トータルで考えると個人口座がおすすめです。
個人口座と法人口座の比較
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