今回は「J-REIT」を個人口座と法人口座のどっちで持つのが得かについて記事にしました。
一般的にJ-REITは売却益(キャピタルゲイン)狙いより、分配金(インカムゲイン)狙いの投資商品だと思いますので、分配金について記事にします。
J-REITの分配金は「日本株の配当金」とほぼ同じ扱いですが、総合課税を選択しても「配当控除」ができない点に特徴があります。
最初に結論を書くと次のとおりです。
個人口座がおすすめの人
- NISAを利用する人
- 会社の利益が多い人
法人口座がおすすめの人
- 会社の経費と相殺する目的の人
- 収益の柱を増やしたい人
目的次第で個人も法人もどっちもアリ!
結論は「米国株の配当金」と同じです。
J-REITの分配金に配当控除が使えない理由
個人口座と法人口座を比較する前に確認したいのが、「配当控除」です。
「日本株の配当金」は次のように「1つの利益」に対して「二重に税金」がかかるので、配当控除という仕組みでトータルの税金の負担を減らします。
- 会社の利益に法人税がかかる
- 税引き後の利益から会社が個人へ配当金を支払い、配当金に所得税&住民税がかかる→二重課税なので配当控除で税負担を減らす
一方、J-REITは利益の9割を超えて投資家に分配すると、法人税が非課税になる特例があります。
- J-REITの投資法人の利益に法人税がかからない
- 税引き後の利益から会社が個人へ配当金を支払い、配当金に所得税&住民税がかかる
二重で税金がかからないので、J-REITで配当控除をする必要がないのです。

法人税がかからない分、「そもそもJ-REITの分配金の利回りが高めになっている」と見ることもできます。
※同じ理由で法人口座で受け取った場合に、会社は「受取配当益金不算入(これも二重課税を調整する仕組み)」を使うことができません。
個人口座で持った方が得な人
まずは個人口座で持った方が得な人について見ていきましょう。
1.NISAを利用する人
個人口座では「NISA(少額投資非課税制度)」が利用できます。
この税金が非課税になる仕組みは、法人口座にはありません。
今回はJ-REITへの投資なので「一般NISA」です(つみたてNISAは使えません)。
<個人口座>
- 特定口座:課税(一律20.315%)
- 一般NISA:非課税
一般NISAを利用すると年間120万円まで投資でき、5年の間にもらうJ-REITの分配金は非課税です。

また、2024年から「新しいNISA」が始まりますが、こちらは少し減って年間102万円まで投資でき、5年の間にもらう分配金は非課税です。
細かい制度の話はさておき
- 年間で100万円前後くらいしか投資しない
- つみたてNISAを利用しない
なら一般NISA(2024年からは新しいNISA)で十分です。
ただし、後で紹介するように、会社が「赤字」の場合は税金がゼロになり、疑似的にNISAと同じ状態を作ることができます。
2.会社の利益が多い人
会社の利益が多い人も、個人口座がおすすめです。
個人がJ-REITの分配金を受け取るときは、3つの選択肢があります。
- 申告不要
- 申告分離課税
- 総合課税(注:配当控除は不可)
下記の図は「日本の上場株式」の配当金に関する図ですが、J-REITの分配金も配当控除以外は基本同じです。

「総合課税」で所得が低い場合は15.315%、「申告不要」「申告分離課税」なら税率は一律20.315%です。
<税率と計算方法>
- 個人口座:20.315%(総合課税選択で15.315%の場合も)
- 法人口座:約23%~34%前後(全部まとめて計算)
一方、会社でJ-REITの分配金をもらうときは最低でも約23%(法人税・法人住民税・法人事業税)の税金がかかります。
さらに他の利益とまとめて計算するので、会社の事業が儲かって利益がたくさんあれば、税率は約34%です。
個人で持つより1割以上税金の負担が増えてしまいますね。
※所得税額控除の話は省略します。
逆に会社が「赤字」の場合は、後で紹介するように税負担がゼロになります。
参考:日本株の配当金との比較
「日本株」の配当金は、次の特徴があります。
- 個人口座では課税所得900万円以下の人の場合、総合課税で配当控除が使えて税率が20%未満になる→有利
- 良い日本株の高配当ETFがなく、分散しようとすると個別株を大量に管理する必要があるが、個人口座は証券会社が自動で計算をしてくれる→簡単
上記の理由で「日本株の配当金」は、「個人口座」をおすすめしています。
一方、「J-REITの分配金」には
- 総合課税を選択しても配当控除がない
- J-REITの指数連動型のETFを利用すれば分散投資ができるので、活用すれば手間はそれほどかからない
ため、個人口座を選ぶメリットが減ります。
法人口座で持った方が得な人
次は、法人口座で持った方が得な人を見ていきましょう。
1.会社の経費と相殺する目的の人
個人でJ-REITの分配金と相殺できるのは、基本的に「上場株式の売却損」だけです。
一方、法人口座は上場株式の売却損はもちろん、「会社が支払う経費」もJ-REITの分配金と相殺できます。
例えば個人事業主がマイクロ法人を作って二刀流をするケースで、これが活用できます。
マイクロ法人にJ-REITを持たせて、分配金と経費(役員報酬と社会保険料の会社負担分)を相殺します。
良い高配当ETFがない日本株と違って、J-REITは指数連動型のETFで分散投資が可能です。
疑似的に個人のNISAと同じ状況を作ることができます。
<J-REITの分配金と税金>
- 個人口座(一般NISA):ゼロ
- 法人口座(会社が赤字):ゼロ
2.収益の柱を増やしたい人
もう1つ、本業以外に会社の収益の柱を増やしたいときに使えます。
本業が順調なときは税金の負担が個人よりやや重いというデメリットはありますが、本業が悪いときには貴重な収入源になります。
ただし、3,000万円投資して利回り4%でやっと年間120万円(月10万円)です。
収益の柱にするには「かなりの金額」を投資する必要があります。
よほど使わない資金がない限りは、微妙なところです。
ムリに株式投資をするより
- 別の事業(収益の柱)を作るために投資
- 融資を受けて不動産投資(家賃収入)
も検討したいところです。
参考:J-REITの含み益は?
「法人口座でJ-REITを持つと、期末に含み益に課税されるのでは?」
という疑問を持つ人もいるかもしれません。
ただし、ほとんどの中小企業では、貸借対照表の「固定資産」の「投資その他の資産」の中で「投資有価証券」としていて、含み益に課税はありません。
まとめ
「J-REITの分配金」について、個人口座と法人口座どちらで「J-REIT」を持つのが得かについて見てきました。
J-REITの分配金は、目的によってお得感が全然違います。
個人口座がおすすめの人
- NISAを利用する人
- 会社の利益が多い人
法人口座がおすすめの人
- 会社の経費と相殺する目的の人
- 収益の柱を増やしたい人
判断基準は次のとおりです。
- 会社の利益が多い→個人口座で
- 会社の利益が少ないかゼロ→法人口座で
日本株の配当金目的の投資は基本的に「個人口座」をおすすめしていますが、J-REITの分配金については目的次第と考えます。
参考