2021年9月の自民党総裁選のときに話題になったのが、売却益や配当金、いわゆる「金融所得」の税率を20%から「30%」に引き上げるという考え方です。
その後は聞かなくなりましたが、2022年以降も金融所得課税に対する議論は「終わっていない」ので、注目したいところです。
<現在の税率>

もちろん、実際にやるかどうかは不透明です。
個人的には一律30%への引上げよりは「超富裕層限定で累進税率にする」など、現実的な方法を選ぶのではないかと考えています。
しかし、未来は誰にもわかりません。
それでも今できることは
「決まってから動く」のではなく
「事前に想定して動く」ことです。
特にFIREという生き方を選択している場合には、税金の増加は影響が大きいです。
ふつうは「FIRE時点の制度」を前提にしていると思いますが、それはちょっと不安です。
財源が厳しい日本の将来を考えると、メインの収入源である税金の制度は「改悪リスク」が非常に高いからです。
もし事前に想定して、何も動く必要がなければ、それを確認することで安心できます。
というわけで今回は、金融所得の税率が30%になったときの対策を2つの場合に分けて、3つずつご紹介します。
<売却益メイン>
- NISA
- iDeCo
- 法人口座
<配当金メイン>
- NISA
- 総合課税で配当控除
- 法人口座
売却益メインの場合の対策
まずは「売却益」の対策です。
(1) NISA
1つ目は、税金がそもそもかからないNISA(少額投資非課税制度)を利用することです。
NISAは最初から「非課税が確定している」のがポイントです。

つまり、税率が20%になろうが30%になろうが関係ないということです。
「一般NISA(2024年からは新しいNISA)」はもちろん、長期投資をする「つみたてNISA」も20年後の税率がどうなっていてもゼロです。
(2) iDeCo
2つ目は、iDeCo(個人型確定拠出年金)の利用です。
まず、iDeCoは運用中に他の商品に変えても税金はかかりません。

ふつうは他の商品に変えるために一度売って現金化する段階で税金がかかります。
また、iDeCoから引き出すときは
- 一時金でもらう→退職所得
- 年金でもらう→雑所得(公的年金等)
と「金融所得(譲渡所得)」ではなく、別の所得に変化します。
なお、iDeCoの注意点は「退職所得」と「雑所得(公的年金等)」の方で改悪リスクが存在する点です。
- 退職所得:退職所得控除の縮小リスク、1/2課税の範囲縮小リスク
- 雑所得(公的年金等):公的年金等控除の縮小リスク
(3) 法人口座
税率が20%から30%になると有利になるのが「法人口座」です。
<会社の税率>
- 所得800万円以下:約23%
- 所得800万円超:約34%
会社の利益が大きいと約34%と30%より高いですが、「所得800万円以下」なら約23%です。
つまり、その範囲におさまるなら法人口座の方が税率が低くなります。
法人口座では事業にかかる経費(役員報酬を含む)と相殺できるので、さらに税金の負担を減らせます。
関連>>【日本株投資】売却益メインなら個人口座と法人口座どっち?
配当金メインの場合の対策
次に「配当金」の対策です。
(1) NISA
売却益と同様に、税金がそもそもかからないNISAを利用することです。
配当金で使えるのは「一般NISA(2024年からは新しいNISA)」です。

(2) 総合課税で配当控除
「日本株の配当金」独自のルールですが、課税所得※900万円以下の人なら、総合課税を選択して、配当控除を使うこと税率を下げることができます。
※課税所得=収入-経費(会社員は給与所得控除)-所得控除(配偶者控除、基礎控除など)
給料で年収1,000万円以下の人はふつう対象です。
結論だけ書くと、配当控除を利用することで税率が20%までにおさまります。
関連>>【日本株投資】配当金メインなら個人口座と法人口座どっち?
なお、
- J-REITの分配金
- 米国株の配当金
は配当控除が使えません。
※個人的には金融所得の税率を30%にするなら「配当控除も増やさないとおかしい」と考えるので、税制改正をするときは「配当控除はどうなるか?」に注目したいところです。
(3) 法人口座
売却益と同様に、法人口座を利用するのもアリです。
日本株の配当金はもちろん、配当控除が使えないJ-REITの分配金や米国株の配当金を法人口座で持つのも良いでしょう。
会社の利益が「所得800万円以下」なら約23%ですみます。
※日本株の配当金は受取配当益金不算入も使ってさらに税負担を減らすことができます。
関連>>【日本株投資】配当金メインなら個人口座と法人口座どっち?
関連>>【米国株投資】配当金メインなら個人口座と法人口座どっち?
まとめ
金融所得に対する税率が20%から30%になるときの対策は、次のとおりです。
<売却益メイン>
- NISA:非課税が確定
- iDeCo:運用益は非課税、退職所得・雑所得に変換
- 法人口座:法人税の税率で計算
<配当金メイン>
- NISA:非課税が確定
- 総合課税で配当控除:税率20%までにおさまる
- 法人口座:法人税の税率で計算
例えば次のような方針が考えられます。
- 売却益メインの投資はNISAとiDeCoを枠まで活用
- 日本株の配当金は特定口座で総合課税・配当控除を活用
- 法人口座の投資も選択肢に入れる
現在の売却益・配当金の税金と個人口座・法人口座の選択については、次の記事をお読みください。