日本では、20歳以上60歳未満のすべての国民は、国民年金に加入することが法律で義務付けられています。
- 自営業者(個人事業主・フリーランス)
- 自営業者の配偶者(専業主婦/主夫)
- 20歳以上の学生
などは、国民年金の第1号被保険者として国民年金保険料を支払います(免除や猶予の制度あり)。
会社員は厚生年金保険に国民年金も含まれていて(第2号被保険者)、会社員の配偶者(専業主婦/主夫)は負担なしで国民年金に加入しています(第3号被保険者)。

国民年金は
- 長生きリスク(老齢基礎年金)
- 障害のリスク(障害基礎年金)
- 配偶者/親の死亡リスク(遺族基礎年金)
といった、3種類のリスクの備えた保険です。
このうち「障害基礎年金」と「遺族基礎年金」で損得を考える人はあまりいないと思います。
一方、老後にもらえる「老齢基礎年金」は
自分が払った年金保険料に対してどれくらいもらえるんだろう。損してないのかな。
と気になる人も多いと思います。
そこでこの記事では、国民年金を何歳まで受け取れば元が取れるのかをご紹介したいと思います。
最初に結論だけ書くと、75歳まで約10年間受け取ると、トントンになります。
会社員の場合は次の記事をお読みください。
関連>>【会社員必見】厚生年金保険は何歳まで生きると元が取れる? 72~76歳が目安
保険料を40年間払うと?
ここ数年の国民年金保険料の推移を見てみると、最近は1万6千円台です。
2022年度:月16,590円
2021年度:月16,610円
2020年度:月16,540円
2019年度:月16,410円
2018年度:月16,340円
出典:日本年金機構「国民年金保険料の変遷」
保険料は毎年変わっていますが、説明をシンプルにするために
- 月16,590円(2022年度の保険料)
- 40年間(480か月)支払い
とすると
- 16,590円×480か月=7,963,200円
になります。
何歳まで生きると回収できる?
75歳でトントン
老齢基礎年金は、10年以上支払うと原則65歳から受け取ることができます。
※昔は25年以上必要だったのが短くなってます。
2022年度の老齢基礎年金は40年間払った人の満額が年間777,800円です。
※保険料免除の期間がある人は計算がもう少し複雑になりますが、省略します。
え、1年で約78万円しかもらえないの…
会社員はここに厚生年金保険の上乗せがありますが、個人事業主はないので、国民年金以外に老後の備えをしておきましょう(別の記事で解説予定)。
さて、「40年間で支払う保険料の総額」と「1年間にもらえる年金」を割ると次のようになります。
- 7,963,200円÷777,800円=約10.2年
つまり、65歳にもらい始めて75歳くらいまで生きるなら、「40年間で支払う保険料」と「もらえる年金の総額」がトントンになります(損益分岐点)。
85歳で2倍、95歳で3倍
さらに85歳まで20年受け取ると払った保険料の2倍、95歳まで30年受け取ると3倍もらえます。
損得という意味では、長生きすればするほど得するわけですね。
※正確には国民年金保険料が「社会保険料控除」で2~3割くらい節税できるので、もう少し回収が早くなります。
社労士の先生による検証でも同じ結果が出ています。
参考:佐野社労士事務所「年金は何年貰ったら元が取れるの?」
参考:10年前の保険料の場合
国民年金保険料は右肩上がりで高くなっているので、念のため10年前の保険料も使って計算してみましょう。
- 支払う保険料:月14,980円(2012年度)×480か月=7,190,400円
- もらえる年金:年間777,800円(満額)
- 1÷2=約9.2年
さっきが約10.2年だったので、1年回収が早かったということになります。
もし同じペースで増えていくと、回収できる年数が11年、12年とのびるかもしれません。
平均寿命で考えてみると?
年齢ごとに、国民年金保険料ともらう年金の関係をまとめると次のとおりです。
- 75歳→保険料がちょうど回収
- 85歳→保険料の2倍回収
- 95歳→保険料の3倍回収
厚生労働省が発表する「令和3年簡易生命表」によれば、2021年の日本人の平均寿命は
- 女性:87.57歳
- 男性:81.47歳
なので、多くの人は2倍回収できるかどうかです。
大和証券は「大人の教養として知ってほしい、国民年金の利回り試算」として、国民年金の利回りを計算しています(2020年度のデータですが、基本同じです)。

10年もらう75歳で利回りがプラスに転じて、女性・男性の平均寿命で見ると
- 女性:87.57歳→2.21%
- 男性:81.47歳→1.51%
ということになります。
国民年金を金融商品(投資)と考えるともっと利回りが欲しいところですが、国民年金はあくまで
「長生きリスクに備えた保険」
です。
そうすると、平均寿命まで生きれば払い損になることなさそうです。
障害年金や遺族年金もある保険
「自分は75歳まで長生きするつもりはないから払いたくないよ!」
という若い人もいると思います。
しかし
- 障害のリスク(障害基礎年金)
- 配偶者/親の死亡リスク(遺族基礎年金)
は年齢に関係なく、いつでもあり得える「まさか」です。

国民年金保険料の未納はおすすめしません。
そもそも強制加入のため、収入的に厳しい場合は免除や猶予を活用しましょう。
最後に
人生100年時代と言われるようになりました。
「自分がいつまで生きるのかがわからない」
からこそ、長生きリスクへの備えは現代人にとって必須と言えます。
まずは自分が入っている年金制度を知るところからはじめましょう。
このブログがそのきっかけになればうれしいです^^
関連>>【会社員必見】厚生年金保険は何歳まで生きると元が取れる? 72~76歳が目安
<本の紹介>
人生100年時代を生き抜くために必読の本です。