日本の公的年金は
- 厚生年金保険(2階):会社員・公務員が加入
- 国民年金(1階):20歳以上60歳未満のすべての国民が加入
の2階建てになっています。

会社員の場合、毎月給料から厚生年金保険料が天引きされています。
その中には「国民年金」の部分も含まれています(第2号被保険者)。
厚生年金保険(国民年金を含む)は
- 長生きリスク(老齢年金)
- 障害のリスク(障害年金)
- 家族の死亡リスク(遺族年金)
といった、3種類のリスクの備えた保険です。
このうち「障害年金」と「遺族年金」で損得を考える人はあまりいないと思います。
一方、老後にもらえる「老齢年金」は
自分が払った年金保険料に対してどれくらいもらえるんだろう。損してないのかな。
と気になる人も多いと思います。
そこでこの記事では、厚生年金保険を何歳まで受け取れば元が取れるのかをご紹介したいと思います。
最初に結論だけ書くと、72~76歳まで受け取ると、トントンになります。
<40年間払う場合>
平均月給 | 保険料 | 年金 | 回収年数 | 年齢 |
20万 | 878万 | 131万 | 6.7 | 72歳 |
30万 | 1,317万 | 157万 | 8.3 | 74歳 |
40万 | 1,800万 | 183万 | 9.8 | 75歳 |
50万 | 2,196万 | 210万 | 10.4 | 76歳 |
60万 | 2,591万 | 236万 | 11.0 | 76歳 |
※平均月給には賞与も含めたものとして考えてください。月給40万円なら年収500万円弱です。
個人事業主の場合は次の記事をお読みください。
関連>>【個人事業主必見】国民年金は何歳まで生きると元が取れるのか?
保険料を40年間払うと?
例えば22歳から40年間、会社員を続けてずっと厚生年金保険料を払ったら、いくらもらえるかを考えてみましょう。
もらえる年金は次の2種類です。
- 国民年金→老齢基礎年金
- 厚生年金保険→老齢厚生年金
計算方法
2種類の年金は、次のように計算方法が異なります。
- 老齢基礎年金:約78万円×加入期間÷480月
- 老齢厚生年金:平均月給(賞与含む)×加入期間×0.005481※
※2003年3月以前は計算式が異なりますが、説明を簡単にするために省略します。
計算方法(40年間)
話をシンプルにするために、老齢基礎年金も老齢厚生年金も40年間(=480月)払ったことにすると
- 老齢基礎年金:約78万円×加入期間480月÷480月=約78万円
- 老齢厚生年金:平均月給(賞与含む)×加入期間480月×0.005481=平均月給(賞与含む)×約2.63
になりました。
これで扱いやすい数字になったと思います。
順番に「平均月給」の部分に20万円~60万円の金額を入れて計算すると次のとおりです。
<月給ともらえる年金(単位:円)>
平均月給 | 老齢基礎 | 老齢厚生 | 合計 |
20万 | 78万 | 53万 | 131万 |
30万 | 78万 | 79万 | 157万 |
40万 | 78万 | 105万 | 183万 |
50万 | 78万 | 132万 | 210万 |
60万 | 78万 | 158万 | 236万 |
「老齢厚生年金」は平均月給(賞与含む)に比例していますが、「老齢基礎年金」は78万円で固定です。
月給が2倍になってももらえる金額は2倍にならないんだね
なぜ2倍もらえないかについては次の記事で詳しく解説しています。
関連>>【よくある誤解】給料が2倍になっても、将来もらえる年金も2倍にならない理由
何歳まで生きると回収できる?
72~76歳でトントン
現在の厚生年金保険料と同じ金額を40年間払うとすると、次のようになります。
<40年間払う場合>
平均月給 | 保険料 | 年金 | 回収年数 | 年齢 |
20万 | 878万 | 131万 | 6.7 | 72歳 |
30万 | 1,317万 | 157万 | 8.3 | 74歳 |
40万 | 1,800万 | 183万 | 9.8 | 75歳 |
50万 | 2,196万 | 210万 | 10.4 | 76歳 |
60万 | 2,591万 | 236万 | 11.0 | 76歳 |
例えば平均月給(賞与含む)が「40万円」の人が、65歳にもらい始めて75歳くらいまで生きるなら、「40年間で支払う保険料」と「もらえる年金の総額」がトントンになります(損益分岐点)。
月給20万円なら「72歳」、月給60万円なら「76歳」なので、72歳から76歳くらいまで生きるならトントンと言えそうです。
損得という意味では、ここからさらに長生きすればするほど得するわけですね。
※正確には厚生年金保険料が「社会保険料控除」で2~3割くらい節税できるので、もう少し回収が早くなります。
社労士の先生による検証でも同じ結果が出ています。
参考:佐野社労士事務所「年金は何年貰ったら元が取れるの?」
平均寿命まで生きるなら?
厚生労働省が発表する「令和3年簡易生命表」によれば、2021年の日本人の平均寿命は
- 女性:87.57歳
- 男性:81.47歳
なので、多くの人は得することになりそうです。
会社負担分はどこへ消えた?
・・・めでたしめでたし、といきたいところですが、本当にそうでしょうか。
厚生年金保険料というのは労使折半で会社が半分負担してくれるのがメリットと良く言われます。
ということは、本当に払っているのは「2倍」と考えることができます。
<会社負担分も含めると>
平均月給 | 保険料 | 年金 | 回収年数 | 年齢 |
20万 | 1,756万 | 131万 | 13.4 | 78歳 |
30万 | 2,634万 | 157万 | 16.8 | 82歳 |
40万 | 3,600万 | 183万 | 19.7 | 85歳 |
50万 | 4,392万 | 210万 | 20.9 | 86歳 |
60万 | 5,182万 | 236万 | 22.0 | 87歳 |
※正確には厚生年金保険料が「社会保険料控除」で2~3割くらい節税でき、会社も経費になるので、もう少し回収が早くなります。
会社負担分も含めると78歳から87歳くらいまで生きるならトントンと言えそうです。
日本人の平均寿命からすると、特に男性は微妙な雰囲気です。
- 女性:87.57歳
- 男性:81.47歳
そういえば、毎年もらうねんきん定期便には会社負担分が載っていませんない。
Q.表示されている厚生年金保険の保険料には、事業主負担分も含まれているのですか。
A.事業主負担分は含まれておりません。
「ねんきん定期便」の「これまでの保険料納付額」には、被保険者負担分の保険料(毎月の給与から控除されている厚生年金保険料)の額を表示しています。
出典:日本年金機構
「労使折半で会社が半分負担してくれるのがメリット」
と言うなら、会社負担分はどこへ消えたのでしょうか?
気になるところです。
最後に
人生100年時代と言われるようになりました。
「自分がいつまで生きるのかがわからない」
からこそ、長生きリスクへの備えは現代人にとって必須と言えます。
まずは自分が入っている年金制度を知るところからはじめましょう。
このブログがそのきっかけになればうれしいです^^
関連>>【個人事業主必見】国民年金は何歳まで生きると元が取れるのか?
<本の紹介>
人生100年時代を生き抜くために必読の本です。