個人事業主やフリーランスが会社を作り、社会保険料の節約をする「マイクロ法人スキーム」があります。
もしかして会社員で副業をやっている自分もマイクロ法人を作ると節約になる?!
結論から言えば、会社員は、マイクロ法人を作ってもほとんどの人は残念ながら社会保険料の節約になりません。
会社が社会保険に加入していなくて、自分で国民健康保険を払っている場合に限られます。
その理由について解説していきます。
※会社員のままマイクロ法人を作っていいかどうかは、この記事で触れません。
マイクロ法人スキームのおさらい
個人事業主・フリーランスの社会保険は、次の3つです。
<個人事業主・フリーランス>
- 国民健康保険
- 介護保険
- 国民年金
このうち稼げば稼ぐほど高くなるのが「国民健康保険」です。
そこでマイクロ法人を作り、「ひとり社長」兼「個人事業主」になります。
そうすると、社会保険は次のように変わります。
<ひとり社長 兼 個人事業主>
- 健康保険
- 介護保険
- 厚生年金保険
健康保険料(介護保険料を含む)と厚生年金保険料は、「役員報酬」だけで計算します。
個人事業主の事業部分は無視されるのです。
この違いを利用して、個人事業の方でがっつり稼ぎ、会社には少し売上をつけて役員報酬を少し払います。
<ひとり社長 兼 個人事業主>
- ひとり社長の役員報酬:健康保険料と厚生年金保険料が少しかかる
- 個人事業主の事業部分:社会保険料がかからない
すると、「健康保険」の負担が国民健康保険のときに比べて少なくなる、というのがマイクロ法人スキームのざっくりした流れです。

健康保険に入ると「個人事業主の事業部分」について国民健康保険がかからない理由は、次の記事に書いています。
関連>>ひとり社長が加入する社会保険の種類|会社員・個人事業主との違いは?
会社員の副業は社会保険料がかかっていない!
前置きが長くなりましたが、次は「会社員の副業」です。
副業はアルバイトなど給料になるものではなく、事業(事業所得や雑所得になるもの)とします。
まず会社員の社会保険を確認すると、次の5つです。
<会社員>
- 健康保険
- 介護保険
- 厚生年金保険
- 雇用保険
- 労災保険
「健康保険」という文字を見てピンと来た人もいると思います。
そうです、さっきの「ひとり社長 兼 個人事業主」と同じことが起こります。
<会社員&副業>
- 会社員の給料:健康保険料と厚生年金保険料がかかる
- 副業:社会保険料がかからない

会社員として副業をしている時点で、実はマイクロ法人スキームと同じことを社会保険でやっているのです。
それどころか、マイクロ法人の役員として役員報酬を払ってしまうと、本業の会社とあわせて両方の会社で社会保険に加入することになります。
役員報酬に対して追加で社会保険料がかかりますし、本業の会社にバレます※。
※「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択届・二以上事業所勤務届」の提出して、どっちの会社をメインにするか決める必要があるため
例えば会社員としての年収が400万円、副業のアフィリエイトで利益が800万円だとしましょう(本業と副業が逆転)。
- 会社員の給料 年収400万円部分:健康保険料と厚生年金保険料がかかる
- 副業 利益800万円部分:社会保険料がかからない
マイクロ法人を作らなくても、さっきの「ひとり社長 兼 個人事業主」と同じ状態になっていますね。

大事なのはマイクロ法人ではなく「給料」
さらに勘のいい人は気づいたと思います。
もしかして「マイクロ法人を作らなくても」社会保険料の節約はできる?
マイクロ法人にしても、副業にしても、やっていることは「給料」と「事業」を切り分けることです。
そして法律どおりに
- 給料:社会保険料を払う
- 事業:社会保険料を払わない
としているだけです。
マイクロ法人スキームは個人事業主が「給料(役員報酬)」を得る1つの方法にすぎません。
ということは、「他人の会社」で社会保険に加入するギリギリの条件で非常勤役員やパートで働いても同じことが起こります(偽装とかはダメ)。
別に、自分の会社を作る必要はないわけです。
大事なのはマイクロ法人ではなく「給料」です。
むしろ、自分で会社を作ることによって、会社の設立コストや維持コスト(法人住民税均等割、税理士報酬、会計ソフト代など)がかかってしまいます。
会社員がマイクロ法人を考えるなら税金面
一方、税金面ではマイクロ法人を作った方が有利になる場合があります。
所得税は「累進税率」といって、所得が高くなるほど税率も高くなり、個人住民税と合わせると最高で約55%です。
会社に対する税率は所得800万円までは約23%、最高でも約34%前後で止まるので、副業の利益を会社につけて「累進税率」から逃れるメリットがあります。
また、家族に所得を分散したり、個人より使える経費の範囲が広いなどのメリットがあります。
・・・ただし、やはりこの場合も会社の設立コストや維持コストを払っても価値があるかは慎重に考える必要があります。
自分の場合、会社を作ろうと思ったのは副業の売上が本業の年収を逆転したときです。
しかもその後に退職しました。
会社員としての年収にもよりけりですが、副業の利益が500万円以下なら「個人」で税金を払い、「個人」にお金を残した方がコストと手間を考えてもいいんじゃないかなと思う派です。
副業で稼ぎまくって、それが3年くらい続くと思えるなら、会社員が節税目的で会社を作るのは意味があると思います。
もし1年でバブルが終わりそうならやめておきましょう(ネットビジネスはそういうの多すぎ!)。
「これ!」という具体的な目安は示しにくいので、自分がどうなのかを知りたい人は、税理士に単発で相談してシミュレーションをしてもらうと確実でしょう。
<本の紹介>
マイクロ法人を使った税金・社会保険料の最適化は昔からあります。
しかし、1つの大きなきっかけになったのは、2002年12月に橘玲氏が『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』の中で「マイクロ法人」を紹介したことではないかと考えます。
下記の書籍は現在出ている中では新版(2017年発行)で、その後、制度的に微妙に変わった部分もあるものの、基本的な考え方は変わっていません。
マイクロ法人に関心がある方は、ぜひ読んでみてください^^