1人で「2つの事業」を行う場合には
- 個人で両方やる
- 会社で両方やる(法人成り)
- 個人でメイン事業、会社でサブ事業をやる(マイクロ法人スキーム)
- 個人でサブ事業、会社でメイン事業をやる
という4つの選択肢があります。
法人成りするときは
「個人でやっている事業を全部会社に移そう!」
というのが多いですが、それが最適かどうかはケースバイケースです。
今回は、4つ選択肢のメリット・デメリットについて次の観点で比較しました。
- 税金(主に所得税・法人税)
- 社会保険料
- 個人に残る資金
- 管理のコストや手間
例えばメイン事業とサブ事業の所得(利益)の合計が「1,000万円」くらいなら、次のようになると考えます。
メイン | サブ | 税金 | 社保 | 資金 | 管理 | |
1 | 個人 | 個人 | ▲ | ▲ | ○ | ◎ |
2 | 会社 | 会社 | ◎ | ○ | ▲ | ○ |
3 | 個人 | 会社 | ○ | ◎ | ◎ | ▲ |
4 | 会社 | 個人 | ◎ | ○ | ○ | ▲ |
なお、税金と社会保険料はケースバイケースです。
所得が「数百万円」と「数千万円」では、当然、結果は変わります。
ぜひ専門家(主に税理士)と一緒にシミュレーションして
「自分の場合はどうしたらいいのか?」
を考えてみてください。
この記事でお伝えしたいのは、4つの選択肢とそのメリット・デメリットです。
案1:個人で両方やる

まずは個人事業者としてメイン事業もサブ事業も両方行うパターンです。
メリット
【管理のコストや手間:◎】
個人事業者は、自分で所得税の確定申告書を作成可能なレベルのため、最低限のコスト・手間でできます。
所得が高くなってくると法人成りを検討したくなりますが、あえて個人事業のままにしている人がいるのはこの手間の関係もあるでしょう。
ネットビジネスなどで一時的に大きく稼げても、その売上が不安定で長く続かないと思うのであれば、個人のままでいた方が無難です。
ふつう
【個人に残る資金:○】
税金・社会保険料を払った後のお金がそのまま個人の資金になります。
会社を作る人にありがちな
「会社から個人へどうやって移すか」
という悩みはありません。
ただし、個人事業者は稼げば稼ぐほど、税金・社会保険料自体が増えて個人の資金が減るので「ふつう」にします。
デメリット
【税金:▲】
所得(もうけ)が多くなればなるほど所得税の超過累進税率により税金が高くなるのがデメリットです。
「法人成り」を考えたくなります(⇒パターン2へ)。
【社会保険料:▲】
所得(もうけ)が多くなればなるほど社会保険料も高くなるのがデメリットです。
「マイクロ法人スキーム」を考えたくなります(⇒パターン3へ)。
案2:会社で両方やる(法人成り)

会社でメイン事業もサブ事業も行うパターンです。
主に2つの場合があります。
- 最初から会社を設立して複数の事業をはじめる
- 個人事業主のときから複数の事業を行っていて、法人成りで全ての事業を会社に移す
ちなみにこのブログは、2番目の「法人成り」をする人を想定して記事を書いています。
関連>>カテゴリー「会社の税金」
メリット
【税金:◎】
所得(もうけ)が多くなればなるほど、 個人事業者の所得税に比べて会社の法人税の方が税率が低くなります。
関連>>【会社の税金は3割!】中小企業の税率は23%、所得800万円を超えたら34%で考えよう。
役員報酬を個人とその家族に払って分散して、給与所得控除(最低55万円)を人数分だけ使えるのも会社の節税メリットです。
ふつう
【管理のコストや手間:○】
会社は法人税の申告書が複雑で税理士に頼むケースが多いので、個人事業者に比べると管理のコストや手間が発生します。
ただ、後で紹介する個人事業者と会社の両方あるパターンに比べるとそれほどではないので「ふつう」にします。
【社会保険料:○】
会社は、1人社長でも社会保険に加入し、役員報酬に対して社会保険料がかかります。
役員報酬の金額自体は自分で決めることができるので、社会保険料を増やすも減らすも自分次第です。
個人事業者に比べると社会保険料のコントロールがしやすいです。
ただ、節税のために役員報酬を増やして社会保険料も増えがちなので「ふつう」にします。
さらに所得が大きくなると事前確定届出給与を利用した社会保険料の削減スキームを使う人が出てきます。
デメリット
【個人に残る資金:▲】
会社の方が個人事業主より税金や社会保険料の負担を減らすことはできますが、その場合は「会社」にお金が残ります。
そうすると「どうやって個人にお金を移すか」という悩みが発生するのがデメリットです。
案3:個人でメイン事業、会社でサブ事業をやる(マイクロ法人スキーム)

個人事業主としてメイン事業を行い、会社でサブ事業を行うケースです。
昔からあるマイクロ法人を使った社会保険料削減スキームはこのパターンを使った方法です。
メリット
【社会保険料:◎】
マイクロ法人スキームの主目的としてよく挙がります。
会社から最低限の役員報酬を払うことで社会保険料の節約になります。
関連>>カテゴリー「マイクロ法人」
【個人に残る資金:◎】
上記で社会保険料の負担を少なくした上で、メイン事業は個人が行うので、資金が残りやすいパターンといえます。
ふつう
【税金:○】
個人事業主と会社に所得(もうけ)を分散することで節税になります。
特に個人事業主では青色申告特別控除、会社役員として給与所得控除のダブルでとれます。
ただし、メイン事業で稼げば稼ぐほど所得税率が上がって税金が増えるので、「ふつう」にします。
あまりに売上が大きくなると、個人がやっているメイン事業も会社に移した方がよいかもしれません(⇒パターン2へ)。
デメリット
【管理のコストや手間:▲】
個人事業主と会社の両方で管理コスト (会計ソフト、税理士報酬など) や管理の手間が発生します。
4)個人でサブ事業を、会社でメイン事業をやる

最後に、個人事業主でサブ事業を、会社でメイン事業を行うパターンです。
メリット
【税金:◎】
所得(もうけ)が多くなればなるほど、 個人事業者の所得税に比べて会社の法人税の方が税率が低くなります。
さらに個人事業主と会社に所得(もうけ)を分散することで節税になります。
特に個人事業主では青色申告特別控除、会社役員では給与所得控除とダブルでとれます。
関連>>【会社の税金は3割!】中小企業の税率は23%、所得800万円を超えたら34%で考えよう。
ふつう
【社会保険料:○】
役員報酬の金額自体は自分で決めることができるので、社会保険料を増やすも減らすも自分次第です。
また、個人事業主で行っているサブ事業に対する社会保険料はかかりません(会社員の副業と同じ)が、パターン3のマイクロ法人スキームほどではないので「ふつう」にします。
デメリット
【個人に残る資金:▲】
この場合もパターン2と同じでメイン事業を会社にしているので、「会社」にお金が残りやすいです。
「どうやって個人にお金を移すか」という悩みが発生するのがデメリットです。
【管理のコストや手間:▲ 】
個人事業主と会社の両方で管理コスト (会計ソフト、税理士報酬など) や管理の手間が発生します。
まとめ
4つのパターンを見てきましたが、再度まとめると次のとおりです。
メイン | サブ | 税金 | 社保 | 資金 | 管理 | |
1 | 個人 | 個人 | ▲ | ▲ | ○ | ◎ |
2 | 会社 | 会社 | ◎ | ○ | ▲ | ○ |
3 | 個人 | 会社 | ○ | ◎ | ◎ | ▲ |
4 | 会社 | 個人 | ◎ | ○ | ○ | ▲ |
目的別にみると
- 管理を楽にしたい⇒全部個人でやる(1)
- 節税したい⇒メインを会社にする(2か4)
- 社会保険料を節約したい⇒メインを個人、サブを会社にする(3)
- 個人に資金を残したい⇒メインを個人、サブを会社にする(3)
でしょうか。
繰り返しになりますが、 税金と社会保険料はケースバイケースです。
事業が2つ以上あれば、さらに複雑になります。
ぜひ税理士と一緒にシミュレーションして、どのパターンを選ぶかをご判断ください。