マイクロ法人

【いつ終わる?】マイクロ法人スキーム(個人事業主の二刀流)を封じる2つの方法

マイクロ法人スキームの封じ方

いわゆる「マイクロ法人スキーム(個人事業主とマイクロ法人の二刀流)」をどうやったら封じることができるのか、考えてみました。

そもそも個人事業主が小さな会社を作って役員報酬をもらって国民健康保険料を最適化(削減)するのは、最近の話ではありません

昔からある方法で、税金の専門家の税理士、社会保険の専門家の社労士自身も会計法人やコンサル法人を作って使ってきました。

関連>>【マイクロ法人】税理士と会計法人

ただ、昔に比べると

  • 国民健康保険料の負担が増えている
  • 高収入フリーランスになりやすい環境が整っている
  • 会社が簡単に設立できて維持費も節約できるようになった
  • YouTubeなどで情報発信する人が増えて認知度が上がった

ということで、目立つようになってきました。

最近は

そろそろマイクロ法人スキームは封じられるんじゃないか

と言う人が増えてきた印象です。

国が社会保険料や税金をアップさせるときには

  1. まず制度の穴を封じる(そうしないと負担を増やしても意味がない)
  2. それから制度を変えてアップする

という段階を踏むことが多いです。

例えば消費税率を引き上げる前後には不動産投資の消費税還付スキームが封じられました。

そうしないと消費税率が5%から8%、8%から10%に引き上げられても全部還付されて意味がないからです。

では、具体的にどんな方法が考えられるでしょうか?

順番に見ていきましょう。

案1:国民健康保険料の追加徴収プラン

あるべき姿は?

まず、現在の「あるべき姿」を確認すると、次のように事業部分について

  • 国民健康保険料
  • 国民年金保険料

がかかるのが個人事業主です。

個人事業主

マイクロ法人を作ると?

このうち特に「国民健康保険料」を削減するためにマイクロ法人を作ります。

役員と社会保険料

ということは、やるなら「事業部分」について「国民健康保険料」を追加で徴収するのがシンプルですね。

マイクロ法人封じ:案1

※国民年金保険料は、役員報酬から天引きする厚生年金保険料(+会社負担分)に含まれているので、追加で取らないと考えました。

具体的には

  • 役員報酬から天引き:健康保険料・厚生年金保険料
  • 事業部分について追加で自分で納付:国民健康保険料

と2つに分けます。

はい、どこかで見たことがありますね。

副業をしている会社員の「住民税」みたいですね。

  • 給料から天引き:住民税(特別徴収)
  • 副業は追加で自分で納付:住民税(普通徴収)

住民税も国民健康保険料も市町村が計算しています。

計算方法の案

例えば、確定申告をした情報の中から、市町村が

  1. トータルで国民健康保険料を計算
  2. 給料から天引きされた健康保険料は差し引く

とすれば、個人事業主だったときと同じ「国民健康保険料」の負担をさせることができます。

案1の問題点

この方法だと、まず「健康保険」と「国民健康保険」という異なるものに加入してしまう点に問題があります。

まあ健康保険の方で「保険証」作って、国民健康保険は「財源」だけ、という可能性はありますが、高額療養費の計算とか難しいです。

そしてもう1つの欠点は、市町村の負担がかなり増える点です。

これはマイクロ法人スキームだけではなく、会社員の副業も同じようにしないと整合性が取れないからです。

  • 給料から天引き:健康保険料・厚生年金保険料
  • 副業は別途自分で納付:国民健康保険料

会社員の家賃収入や配当金とかも社会保険料はかかっていません。

これらについても国民健康保険料を負担させなくてよいのか、ということです。

もちろん、ピンポイントで極端なものだけ潰す、というならそれほど対象は多くないかもしれませんが、最近の「雑所得の売上300万円基準」と同じで、どこで線を引くのかは微妙なところです。

2022年5月に「後期高齢者の保険料、金融所得も勘案検討 骨太方針原案」という報道にあるように、偏っているところにピンポイントで負担を増やす可能性は考えられます。

案2:社会保険適用拡大プラン

社会保険適用拡大・勤労者皆保険

もう1つの案は、最近のトレンドである「社会保険適用拡大」です。

社会保険は「健康保険」と「厚生年金保険」です。

勤労者はみんな社会保険に加入しよう!」という「勤労者皆保険」がテーマの1つになっています。

先行してパート・アルバイトの「106万円の壁」ができたのもこの流れです(国民健康保険・国民年金だった人を健康保険・厚生年金保険にするルール変更)。

勤労者皆保険の実現に向けて、被用者保険の適用拡大の着実な実施や更に企業規模要件の撤廃・非適用業種の見直しの検討、フリーランス・ギグワーカーへの社会保険適用について被用者性の捉え方等の検討を進める。

出典:政府「骨太の方針2022(令和4年6月7日)

フリーランスも社会保険適用?

実はこの中には「フリーランス・ギグワーカーへの社会保険適用」も含まれています。

「会社員とほぼ同じような働き方をしているのに、フリーランス・ギグワーカーは社会保障が薄いよね。だからみんなで社会保険に加入して、社会保障を厚くしよう!」

というのが国の建前です。

※本音はカネがないので負担する人を増やしたい。

あるべき姿その2

国が想定しているあるべき姿は、少なくとも「フリーランス」と「ギグワーカー」に対しては社会保険に加入してほしい=健康保険料・厚生年金保険料を払ってほしいになります。

マイクロ法人封じ:案2

同じく、マイクロ法人スキームを利用するフリーランスについても事業部分について健康保険料・厚生年金保険料を支払うことを求めるのが案2です。

こちらは案1と違って、同じ「健康保険」で混乱はないのがメリットです。

計算方法の案

現在、2か所以上から給料をもらうと合算して社会保険料を計算します。

事業部分も社会保険の世界に入れてしまえば同じ方法で計算ができるので、今のルールをあまり変えずに対応できます。

案2の問題点

案2は、「誰が会社負担分を払うのか?」問題があります。

会社員は、「勤務先の会社」が会社負担分を払っています。

マイクロ法人の役員なら、「マイクロ法人」が会社負担分を払っています。

では、フリーランス・ギグワーカーはどうすればいいのでしょうか。

社会保険に加入するのはいいけど、労使折半する相手が必要です。

仕事を受注している相手企業に負担してもらえばいいのでしょうか?

・・・というわけで、この部分についてはかなり企業の反発が予想され、マイクロ法人スキームを封じる以前の問題として、かなりの調整が必要です。

もしこれが可能になると、従業員を業務委託にして外注したようにして社会保険料を逃れる「偽装請負」も潰すことができます。

最近は偽装請負とまでは言えないものの、大企業が給料が高い従業員を個人事業主化して社会保険料を削減するのも増えていて、道連れにできます。

関連>>【まとめ】社会保険料節約,削減,回避スキーム

最後に

今回は、マイクロ法人スキームを封じる方法を2つ考えてみました。

自分としては社会保険料の「会社負担分」の問題を仕事を受注している相手企業に負担させることで解決できれば、案2で封じることができるのではないかと考えています(少なくとも高収入フリーランスは)。

・・・ただ、私が5分で考えて出てくる程度のプランなので、国の頭のいい人たちはもっと別のプランを考えているかもしれません。

いずれにしても

いつかなくなる

と考えます。

現時点では、違法ではありませんが

  • 実際にやっている人
  • これからやろうとしている人

は、「なくなったらどうするか」まで考えましょう。

関連>>個人事業主とマイクロ法人の二刀流をする前に知っておきたい!デメリット20選

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