「給料」と「将来もらえる年金」の関係で、よくある誤解は次のようなものです。
給料が2倍になったら、将来もらえる年金も2倍になるよね?
・・・残念ながら、年金はそういう仕組みになっていません。
確かに会社員の給料が2倍になると、基本的に支払う厚生年金保険料も2倍になります。
しかし、将来受け取る年金は2倍になりません。
例えば40年間の平均月給が20万円の人と40万円の人を比べると、40万円の人は2倍の保険料を払っているのにもらえる年金は1.4倍です。
平均月給 | もらえる年金 | 何倍? |
20万円 | 131万円 | 基準 |
40万円 | 183万円 | 1.4倍 |
ええ~、おかしいじゃん。
なぜそうなるのか、年金の仕組みを見てみましょう。
※この考え方は、ひとり社長が自分の役員報酬を決めるときにも影響がある話ですが、改めて別の記事で解説します。
理由は「国民年金」を含むから
会社員は毎月の給料から「厚生年金保険料」が天引きされています。
「厚生年金保険」と言っていますが、実は下の図のように「国民年金」も同時に加入しています。

この「2種類の年金の違い」が今回のポイントです。
国民年金
まず「国民年金」は、20歳から60歳までの人が対象です。
会社員だけでなく自営業者や専業主婦/主夫の人も含めてみんなが入ります。
40年間納付すると満額の「老齢基礎年金」として年間で約78万円を受け取ることができます。
厚生年金保険
会社員は厚生年金保険にも加入します。
将来もらえるのが「老齢厚生年金」です。
老齢厚生年金は「平均月給」と「加入期間」によって計算します。
老齢基礎年金は給料に比例しない
まとめると、将来、年金をもらうときには
- 老齢基礎年金→加入期間
- 老齢厚生年金→平均月給と加入期間
によってもらえる金額が変わります。
これを見るとわかるように、老齢基礎年金は給料に比例しません。
給料が多くても少なくても「加入期間だけ」で受取額が決まります。
結果、給料が2倍になっても
- 老齢基礎年金→影響しない
- 老齢厚生年金→2倍
と異なるので、単純にもらえる金額も2倍にならないのです。
将来もらえる年金はいくら?
では本当に2倍もらえないのか、具体的に計算結果を見てみましょう。
計算方法
2種類の年金は、次のように計算方法が異なります。
- 老齢基礎年金:約78万円×加入期間÷480月
- 老齢厚生年金:平均月給(賞与含む)×加入期間×0.005481※
※2003年3月以前は計算式が異なりますが、説明を簡単にするために省略します。
計算方法(40年間)
話をシンプルにするために、老齢基礎年金も老齢厚生年金も40年間(=480月)払ったことにすると
- 老齢基礎年金:約78万円×加入期間480月÷480月=約78万円
- 老齢厚生年金:平均月給(賞与含む)×加入期間480月×0.005481=平均月給(賞与含む)×約2.63
になりました。
これで扱いやすい数字になったと思います。
順番に「平均月給」の部分に20万円~60万円の金額を入れて計算すると次のとおりです。
また、1番右に平均月給20万円を基準にしたときに「何倍もらえるのか」も計算してみました。
<月給ともらえる年金(単位:円)>
平均月給 | 老齢基礎 | 老齢厚生 | 合計 | 何倍? |
20万 | 78万 | 53万 | 131万 | 基準 |
30万 | 78万 | 79万 | 157万 | 1.2倍 |
40万 | 78万 | 105万 | 183万 | 1.4倍 |
50万 | 78万 | 132万 | 210万 | 1.6倍 |
60万 | 78万 | 158万 | 236万 | 1.8倍 |
「老齢厚生年金」は平均月給に比例していますが、「老齢基礎年金」は78万円で固定です。
平均月給20万円の人と40万円の人を比べても1.4倍(支払う保険料は2倍なのに)です。
さらに20万円の人と60万円の人と比べても1.8倍(支払う保険料は3倍なのに)と差が出ています。
月給100万円の人はどうか?
さらに月給が増えていくとどうなるでしょうか。
実は厚生年金保険料には「月給65万円の上限」があります。
月給が65万円を超えると、月給が100万円だろうが200万円だろうが支払う厚生年金保険料が同じ金額(頭打ち)になるからです。
「どれだけ稼いでも、これ以上、厚生年金保険料が増えない」
とポジティブな見方もできますし
「月給100万円の人は、将来もらえる年金が月給65万円の人と同じくらいしかない」
とネガティブな見方もできます。
最後に
会社員の給料と厚生年金保険料の支払いが2倍になっても、将来もらえる年金は2倍にならない理由について解説しました。
理由は「国民年金」からもらえる「老齢基礎年金」が最大78万円と固定で、給料に比例しないからです。
将来もらえる年金を増やそうとすると、必要な厚生年金保険料が増えていってしまいます。
だから単純に会社員として「月給」をアップする、というのは保険料ともらえる年金のバランスが悪い話になります。
「あくまで保険だから、損も得もない」
と言ってしまえばそこまでですが
「給料を無理にアップするより、副業をがんばり、投資に回して将来に備える」
というのは時代の流れだけではないのかもしれません。

自分の年金を知るには、毎年届く「ねんきん定期便」で、将来もらえる(予定の)年金がいくらなのか、ぜひ確認してみてください。
<本の紹介>
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