個人事業主がマイクロ法人を作り、役員報酬を最低限にして1番低い厚生年金保険料を支払うと、おかしなことが起こります。
- 国民年金保険料より低い厚生年金保険料
- 老齢・障害・遺族年金が多くもらえる
あれ? おかしくない?
つまり、個人事業主のときよりも支払う保険料が少ないのに、保障が手厚くなるのです。
年金の上乗せイメージはこちらです。

出典:厚生労働省「社会保険適用拡大特設サイト」
順番に見ていきましょう。
保険料が低くなる不思議
国民年金保険料は、月16,590円(2022年度)です。
一方、厚生年金保険料の最低等級、標準報酬月額88,000円の場合、
- 自己負担+会社負担:月16,104円
- 自己負担だけ:月8,052円
になります。

「会社負担」と言っても、マイクロ法人の負担=実質自分の負担です。
そのため自己負担+会社負担の合計と国民年金保険料を比較すると
- 月16,104円(厚生)
- 月16,590円(国民)
厚生年金保険料の方が486円低い…
厚生年金保険料には、国民年金の分も含まれています。
普通に考えると国民年金保険料より高くなるはずです。
しかし実際には、厚生年金保険料を最低ラインにすると、国民年金保険料より保険料が少なくなります。
関連>>【マイクロ法人】役員報酬はいくら?月45,000円/年54万円が税金・社会保険料を考えると最適解になる理由
もらえる年金が手厚い不思議
次にもらえる年金の話です。
保険料が少ない分、もらえる年金も少なくなるなら
「まあ、ふつうだよね」
と思いますが、現実は逆です。
保険料が少ないのに、もらえる年金が多くなります。
おかしい!おかしい!
厚生年金保険(国民年金を含む)は
- 長生きリスク(老齢年金)
- 障害のリスク(障害年金)
- 家族の死亡リスク(遺族年金)
といった、3種類のリスクの備えた保険です。
国民年金だけのときと比べて、「老齢・障害・遺族厚生年金」が上乗せされるので、もらえる年金が増えます。

老齢年金
老齢基礎年金だけでなく、老齢厚生年金も上乗せされます。
障害年金

国民年金に比べてかなり保障が手厚いのが障害年金です。
- 障害等級1・2級:障害厚生年金の上乗せ
- 障害等級3級:障害厚生年金
- それより軽い一定の障害:障害手当金(一時金)
国民年金の障害基礎年金は障害等級1・2級しか出ません。
一方、厚生年金保険は3級でも障害厚生年金をもらうことができ、より備えになります。
老齢年金は老後の話ですが、障害年金は目の前の話でもあります。
対象になるかどうかは大きな話です。

遺族年金
遺族年金も厚生年金保険にすることで保障が手厚くなります。
- 遺族厚生年金が上乗せ
- 遺族厚生年金は子どもがいない場合でももらえる
一方、国民年金の遺族基礎年金は「子どもがいる」ことが前提です。
最後に
高収入の個人事業主がマイクロ法人を作る理由は、1番に「国民健康保険料」の削減にあります。
実はそれだけでなく個人事業主時代の「国民年金」より低い金額で、国民年金より手厚い保障を得ることが可能になっています。
ふつうに考えるとおかしいので、将来的に何らかの見直しがかかるかもしれませんが、今の制度は歪(ゆが)みがあると言えます。
マイクロ法人の役員報酬の最適解については、次の記事をお読みください。
関連>>【マイクロ法人】役員報酬はいくら?月45,000円/年54万円が税金・社会保険料を考えると最適解になる理由
<本の紹介>