YouTubeやブログでマイクロ法人を使った節税や社会保険料の最適化の話を見て
「自分もマイクロ法人を作ろう!」
と思っている個人事業主の人に向けて、この記事ではデメリットを20個紹介します。
別に嫌がらせでたくさん並べるわけではありません。
個人事業主だけのときとの違いを知ってほしくて並べてみました。
- 知っててやる
- 知らなくてやる
この2つは全然違うからです。
デメリットに対する対策も合わせて紹介するので、順番に確認しましょう。
次の3つに大きく分けて合計20個になります。
- 会社を持つデメリット8選
- 役員報酬のデメリット6選
- 二刀流のデメリット6選
会社を持つデメリット8選
まず最初に、会社を作ったら必ず発生するデメリットからいきます。
これは個人事業の全部を会社に移す「法人成り」と同じデメリットです。
マイクロ法人の視点で対策も合わせて紹介します。
1.会社の設立費用がかかる
- 株式会社:20万円~24万円
- 合同会社:6万円~10万円
くらいが目安です。
司法書士に頼む場合は、その報酬がさらに必要です。
<対策>
会社の設立費用を上回るくらい「会社を作る金銭的なメリット」が出るときに会社設立を検討しましょう。
2.自分の住所が登記情報で公開される
会社を登記するときには「代表取締役(株式会社の場合)」の名前と住所を登記します。
<イメージ>
役員に関する事項 | 取締役 鈴 木 一 郎 |
東京都千代田区丸の内**番 代表取締役 鈴 木 一 郎 |
<対策>
マイクロ法人として利用する場合、特に会社名をオープンにするわけではありません。
登記情報は有料なので、確認する人はかなり少ないでしょう。
3.会社の住所がネットで公開される
法人番号制度によって、会社の名前と住所が公開されます。
公式>>国税庁法人番号公表サイト
「自宅」を会社の住所として登記すると、ネットで公開されます。
登記情報と違ってこちらは無料で誰でも見れます。

もし「賃貸」で法人登記がNGの場合、法人番号サイトを見れば簡単にバレます。
関連>>【法人番号で何がわかる?】仕事・会社設立・不動産投資で使える方法3選
<対策>
マイクロ法人として利用する場合、住所が公開されてもあまり気にする必要はないかもしれません。
もし気になるなら登記ができるバーチャルオフィスを借りるのも手ですが、余計なお金がかかるので人によるかと思います。
4. 銀行・証券口座開設が難しい場合も
マネーロンダリングで悪用する人のせいで会社の銀行口座が作りにくくなっています。
実態のない会社を警戒しているので、マイクロ法人は怪しいと見られがちです。
自分は「楽天銀行」の法人口座を断られました。
関連>>【ひとり会社設立体験談】銀行口座をメガバンク、地方銀行、信用金庫、ゆうちょ、ネットバンクで作った感想
また、マイクロ法人の売上を高配当株やJ-REITなど投資収益にしようとして証券口座を作る場合もあります。
こちらも「証券口座が開設できなかった!」という話をたまに聞きます。
ちなみに自分は楽天銀行はダメでしたが、楽天証券はOKでした(どうして…)。
関連>>【ひとり会社設立体験談】証券口座は楽天証券・SBI証券がおすすめ。個人口座との違いを比較してみた。
<対策>
- 資本金は100万円以上(できれば200万円以上)
- 事業目的を株式投資だけとか極端なものにしない
- 1つの銀行がダメなら他の銀行でトライ(特に地方銀行、信用金庫)
- 証券会社も同じく何度もトライ
個人と違って口座開設に必要な書類が多いのでがんばりましょう。
5.ネットバンキングは有料が多い
個人口座では無料でも、法人口座だとネットバンキングをするのに毎月お金がかかるところが多いです。
<有料になりがち>
- メガバンク
- 地方銀行
- 信用金庫
例えば三菱UFJ銀行は毎月1,760円かかります。

地方銀行と信用金庫は、システムの使い勝手が微妙なのに手数料が高くて自分はやめました。
一方、無料のものもあります。
- ゆうちょ銀行
- ネット銀行(PayPay、楽天、SBI、あおぞらなど)
<対策>
ネットバンキングが無料で使えて、社会保険料の口座振替もできる「ゆうちょ銀行」だけがおすすめです。
関連>>マイクロ法人の銀行口座は「ゆうちょ銀行」がおすすめな理由5選
6.法人で契約すると高くなる
クレジットカードの法人カード、携帯電話など、法人名義で契約すると高くなる傾向にあります。
<対策>
二刀流の場合は個人事業主側で主に経費にするので、個人名義のものが多くなり、あまり影響はないと考えます。
7.赤字でも税金がかかる
法人住民税には町内会費のような「均等割」というものがあって、赤字でも最低7万円かかります(10年で70万円)。
<対策>
均等割を払っても他で節約効果があるか確認しましょう。
8.法人税の申告は素人には難しい
マイクロ法人でも最低限の法人税の申告書を作る必要があります。
所得税の確定申告書に比べると難しいので、ネット上の知識だけで作ってもうまくいかない方がふつうです。
<対策>
- 税理士に相談・お願いをする
- 税務署に相談する
特に1年目なら、多少お金がかかっても税理士にお願いして、空いた時間で稼ぐのをがんばった方がコスパは良いです。
個人事業の方で既に税理士がいるなら、例えば申告書だけ作ってもらうという手もあります。
役員報酬のデメリット6選
次に自分に対して役員報酬の支払いも必要になるので、そのデメリットも挙げてみましょう。
1.社会保険の手続きが毎年必要
社会保険については、毎年書類(算定基礎届)の提出が必要になります。
<対策>
手続きはそれほど難しくありません。
ネットで調べたり、年金事務所に相談すれば自分でできます。
2.金額をどうするか決めないといけない
役員報酬をいくら払うかを自分で考える必要があります。
会社の場合、役員報酬を変更できるタイミングが年1回なので、そう簡単に途中で変更できません。
<対策>
マイクロ法人スキームの場合、役員報酬の最適解(月45,000円)は既に出ているので、あまり悩まなくてもいいと考えます。
その他の金額も含めて考え方は次の記事をお読みください。
関連>>【マイクロ法人】役員報酬はいくら?月45,000円/年54万円が税金・社会保険料を考えると最適解になる理由
3.給与計算をする必要がある
役員報酬が決まったら、次の金額を天引きして支払います。
- 所得税(源泉所得税)
- 個人住民税
- 社会保険料(厚生年金保険料・健康保険料)
<対策>
一般的には「給与計算」と呼ばれるものですが、役員の場合は月の役員報酬が決まっていて、税金・社会保険料の計算もシンプルです。
数回やれば慣れるでしょう。
4.税金と社会保険料を支払う必要がある
役員報酬から天引きした税金・社会保険料を支払います。
<対策>
所得税(源泉所得税)と個人住民税は、手続きをすれば半年に1回の支払いでOKです。
社会保険料(厚生年金保険料・健康保険料)は口座振替をすれば自分で払う必要がありません。
なお、ネット銀行(イオン銀行以外)は社会保険料の口座振替ができないのでご注意ください。
5.年末調整が必要になる
会社員の場合、会社が年末調整をして1年間の税金計算をしてくれます。
一方、会社から役員報酬を払う場合は、自分で自分の年末調整をすることになります。
<対策>
役員報酬の場合、年末調整はそれほど難しくないのでネット上の知識でもなんとかなります。
不安なら税理士に会社の決算・申告と一緒に頼めばよいでしょう。
6.役員報酬が低いと退職金がとりづらい
退職金はあまり高すぎると経費にできない(過大役員退職給与)というデメリットがあります。
特に役員報酬が低いと経費にしづらいです。
<対策>
マイクロ法人の場合、そもそも会社にあまり利益を残さないので、退職金を出すほどではないでしょう。
退職金がほしい場合は、小規模企業共済やiDeCoを利用すれば、退職所得として
- 退職所得控除
- 1/2課税
- 分離課税
の3つの優遇措置を受けることができます。
二刀流のデメリット6選
最後に二刀流ならではのデメリットです。
1.個人と会社で同じ事業はNG
税金の世界では「実質所得者課税の原則」というのがあります。
本来は1つの事業を1人がやって税金がかかるところを、個人と会社の2つに分けると節税できてしまいます。
そこで単に「脱税目的のペーパーカンパニー」だと税務調査で見られるリスクがあります。
<対策>
- 別々の事業をやる(本来の姿)
- マイクロ法人で株式投資や不動産投資をやる
個別に判断するしかありませんが、税理士のスフィンクス所長さんの次の記事が参考になるのでぜひお読みください。
参考>>マイクロ法人が違法になる「個人と同じ事業はNG問題」を解説
2.経理の手間が増える
個人事業主だけのときと違って、経理の手間が増えます。
決算も個人事業と会社で2回やらないといけません。
<対策>
マイクロ法人の事業が最低限の売上を作るだけで、あまり取引がなければ、経理の手間もそれほど増えません。
もし手間がかかる場合でも、税理士や記帳代行会社に依頼して、空いた時間を使って稼げましょう。
3.会計ソフトが2つ必要
個人事業用と会社用で2ついります。
有料の場合は、クラウド会計ソフトの大手3社(freee、マネーフォワード、弥生)がおすすめです。
〈私が使っている会計ソフト〉
- 個人事業:マネーフォワード確定申告
- 会社:マネーフォワードクラウド会計
<対策>
無料でやりたいなら、例えば「クラウド円簿」というソフトがあります。
※有料のクラウド会計ソフトと違って、ネットバンキングやクレジットカードのデータと連携できませんが、取引(仕訳)の数が少ないマイクロ法人なら十分です。個人事業は有料のクラウド会計ソフト、会社は無料ソフトの円簿会計を使うのもアリです。
4.iDeCoの枠が減る
個人事業主だけなら月88,000円が最高ですが、厚生年金保険に加入してiDeCoをするときは月23,000円まで枠が減ります。
<対策>
- 厚生年金保険による「老齢厚生年金」の上乗せで少しカバーできる
- つみたてNISAを活用する
- 課税される前提で特定口座で投資する
関連>>【マイクロ法人】1番低い厚生年金保険料にすると国民年金より安いのに年金が多くもらえる件
5.社会保険料の改正リスク
マイクロ法人スキームによる社会保険料の削減は、税理士や社会保険労務士といった税金や社会保険の専門家自身も昔から行ってきた方法でもあります。
だから変わらないというわけではありませんが、制度を変わるリスクは常にあります。
関連>>【マイクロ法人】税理士と会計法人|税理士報酬が不要というメリット
<対策>
制度が変わって社会保険料が削減できなくなったらどうするかも、あらかじめ考えておきましょう。
税理士に確認しておくと安心です。
6.節税メリットがあまりない
マイクロ法人スキームは、個人に事業をほとんど残します。
個人事業が儲かりすぎると個人に税金が多くかかってしまいます。
あくまで社会保険料を減らすことができるだけで、たくさん稼ぐときは節税効果が薄くなります。
<対策>
社会保険料の削減メリットよりも節税メリットの方が多くなる場合は、個人からすべての事業を会社に移して役員報酬をしっかりとるのも1つです。
- 個人事業主→二刀流→会社に一本化
結果、税金・社会保険料のトータルで安くなる場合があります。
税理士と相談してシミュレーションして、どうするか考えてみてください。
最後に
今回は、個人事業主とマイクロ法人の二刀流をする前に知っておきたいデメリットを20個紹介しました。
人によっては他にもデメリットをあげるかもしれません。
いずれにせよマイクロ法人の場合は、対策がうちやすいので柔軟に対応しましょう。
また、自分だけで考えるのではなく、専門家(特に税理士)と相談すると安心です。
<本の紹介>
マイクロ法人設立を考えている人には、まずこの本をおすすめします。