個々の仕事の「売上」は、相手への請求書を見れば簡単に把握できます。
一方、個々の仕事の「利益」は、考えたことがあるでしょうか。
特に「ひとり」で事業をやっていると、利益=手取り=現金です。
だから利益を把握するということは
「自分はいったい主にどの仕事でご飯を食っているのか?」
を知ることにつながります。
毎月の支払いに追われている人ほど、利益にこだわりたいところです。
自分の仕事を「利益」をベースに分解することで、「次の一手」を考えるのに役立ちます。
(1) 売上が大きいのに実は儲かってない仕事が見つかる
→少しずつ減らして他の仕事に変えなくていいか? 経費を減らせないか?
(2) 仕事の割に手取りが多い仕事が見つかる
→儲けの種。もっと増やせないか?
(3) その仕事がなくなったときの影響が分かる
→仕事がなくなる前に同じ利益を出せる仕事を見つけられないか?
順番に見ていきましょう。
まずは仕事を利益の多い順に並べる
今回は「自分の仕事を分解してみよう!」ということで、「仕事の利益」に注目して分解していきます。
最初に分析するための準備をしましょう。
<手順>
- 仕事をリストアップ
- 年間の売上金額を書く
- 直接かかる経費を引く
- 利益が多い順に並べる
1.仕事をリストアップ
Excel、A4用紙、ノート、手帳、なんでもいいので
- 自分が今やっている仕事
を思いつく限り並べてみましょう。
仕事内容から細かく分けられない、分けるのが面倒という人は
- 取引先の名前
を並べてもOKです。
今回はわかりやすい「取引先」ごとを例にします。
- A社
- B社
- C社
- D社
- E社
- F~J社(同じサービスを少額で提供)
- たくさんの個人(個人向けのサービス)
最後の2つのように
- 売上金額が少ない
- 1つの事業単位
- 不特定多数の個人向け
といったものはグループ化しましょう。
自分が管理しやすいようにとりあえず名前を並べて、なんか違うと思ったら後で分類を変えましょう。
2.年間の売上金額を書く
次に、個々の仕事または取引先名の隣に年間の売上金額を書きます。
- A社:300万円
- B社:180万円
- C社:150万円
- D社:80万円
- E社:20万円
- F~J社:10万円×5社=50万円
- 個人:80万円
- 売上合計:860万円
昨年の会計ソフトのデータや実際の請求書を見ながらやりましょう。
もし、昨年はあっても単発で2度とないものは書く必要はありません。
逆に、今度継続的に売上になるものは付け加えましょう。
3.直接かかる経費を引く
そしてそれぞれに「直接かかる経費」をわかる範囲で書いて引きます。
- A社:売上300万円-外注費180万円=120万円
- B社:売上180万円-経費10万円=170万円
- C社:売上150万円-経費5万円=145万円
- D社:売上80万円(直接の経費なし)
- E社:売上20万円-外注費10万円=10万円
- F~J社:売上50万円-経費5万円=45万円
- 個人:売上80万円-経費30万円=50万円
- 利益合計:620万円
4.利益が多い順に並べる
利益が出たら、利益が多い順に並べます。
- B社:売上180万円-経費10万円=170万円
- C社:売上150万円-経費5万円=145万円
- A社:売上300万円-外注費180万円=120万円
- D社:売上80万円(直接の経費なし)
- 個人:売上80万円-経費30万円=50万円
- F~J社:売上50万円-経費5万円=45万円
- E社:売上20万円-外注費10万円=10万円
- 利益合計:620万円
ここまでやってみるだけでも、いつもと違った景色が見えると思います。
今まで「売上順」でしか見てなかった人は、ぜひやってみてください。
では次に、このリストをもとに「次の一手」を考えてみましょう。
【視点1】売上が大きいのに実は儲かっていない仕事はありませんか?
自分の仕事(取引先)を利益順にみたときに、売上が大きいのに実はあまり儲かっていないものがないか、確認しましょう。
- B社:売上180万円-経費10万円=170万円
- C社:売上150万円-経費5万円=145万円
- A社:売上300万円-外注費180万円=120万円
- D社:売上80万円(直接の経費なし)
- 個人:売上80万円-経費30万円=50万円
- F~J社:売上50万円-経費5万円=45万円
- E社:売上20万円-外注費10万円=10万円
- 利益合計:620万円
そしてリストを見ながら「少しずつ減らせないか?」を考えます。
- その仕事に直接かかる経費を減らせないか?
- その仕事に自分がかかわる時間を減らせないか?
- そもそもその仕事をやめて他の仕事をした方が稼げないか?
例えばA社の仕事は、売上は大きいものの、手取りはイマイチ残っていません。
どんな「次の一手」を打つかは仕事によって違いますが、まずは「見直す」必要があるという意識を持つことが重要です。
【視点2】仕事の割に手取りが多い仕事はありませんか?
今度は逆に、仕事の割に手取りが多い仕事を探します。
- B社:売上180万円-経費10万円=170万円
- C社:売上150万円-経費5万円=145万円
- A社:売上300万円-外注費180万円=120万円
- D社:売上80万円(直接の経費なし)
- 個人:売上80万円-経費30万円=50万円
- F~J社:売上50万円-経費5万円=45万円
- E社:売上20万円-外注費10万円=10万円
- 利益合計:620万円
例えばD社に対する仕事は、売上金額は80万円と他と比べて小さいですが、経費もかからず手間もそれほどかからないとしたら、儲けの種です。
また、E社の仕事も売上20万円ですが、すべて外注していて自分がまったく動く必要がないならある意味、10万円の不労所得です。
同じ仕事を他でも増やせないかを考えます。
【視点3】その仕事がなくなったときにいくら影響するか?
仕事というのは、ずっとあり続けるわけではありません。
その仕事がなくなったときに「いくら」影響があるかを確認することはココロの安定につながります。
- B社:売上180万円-経費10万円=170万円
- C社:売上150万円-経費5万円=145万円
- A社:売上300万円-外注費180万円=120万円
- D社:売上80万円(直接の経費なし)
- 個人:売上80万円-経費30万円=50万円
- F~J社:売上50万円-経費5万円=45万円
- E社:売上20万円-外注費10万円=10万円
- 利益合計:620万円
例えばA社との取引がなくなると「売上」では300万円なくなりますが、「利益」で見ると120万円です。
「A社との取引がなくなったらどうしよう」
という不安に対する備えは、「120万円の利益」を別の取引先で確保することです。
売上だけを見ていると
「300万円の売上なんてムリだ」
となってしまいがちですが、利益を見れば現実的に考えることができます。
【応用】自分の時給も含めて考える
さてここまで個々の仕事(取引先)を「利益順」に分解することで次の3つのメリットがあります。
- 売上が大きいのに実は儲かってない仕事が見つかる
- 仕事の割に手取りが多い仕事が見つかる
- その仕事がなくなったときの影響が分かる
そして「次の一手」につなげることができると説明してきました。
- 少しずつ減らして他の仕事に変えなくていいか? 経費を減らせないか?
- 儲けの種になる仕事をもっと増やせないか?
- 仕事がなくなる前に同じ利益を出せる仕事を見つけられないか?
ただ、「売上-直接かかった経費」では、1つ、重要な経費が含まれていません。
それは「自分が動いたことによる人件費」です。
外注すれば外注費として金額が表れますが、自分が動いた場合は見えません。
そこで応用編です。
もっと分析したい場合は、それぞれの仕事(取引先)に対して自分が何時間動いているか、を集計して、時給でかけて計算します。
とりあえず、自分の時給は「1,000円」で計算してみてください(自分の時給は高いと思う人は2,000円でもOKです)。
10時間で1万円、100時間で10万円です。
- B社:売上180万円-経費10万円-自分の人件費10万円=160万円
- C社:売上150万円-経費5万円-自分の人件費5万円=140万円
- A社:売上300万円-外注費180万円-自分の人件費20万円=100万円
- D社:売上80万円-自分の人件費4万円=76万円
- 個人:売上80万円-経費30万円-自分の人件費10万円=40万円
- F~J社:売上50万円-経費5万円-自分の人件費5万円=40万円
- E社:売上20万円-外注費10万円-自分の人件費0円=10万円
自分の人件費、つまり「手間」も金額で反映してみると、また違った景色が見えます。
自分の人件費も反映すると「赤字」になるものもあるかもしれません。
その場合は
- 本当に自分がやる必要があるのか?
- 誰かに外注した方がいいのではないか?
と見直す良い機会です。
最後に
日々、環境は変化していきます。
変化に対応するには、「次の一手を打つ力」が重要です。
仕事や取引先を「利益」で把握することは、その助けになります。
1度、個々の仕事(取引先)の利益を把握したら終わりではなく、3か月に1回、あるいは半年に1回は同じことをやってみましょう。
そしてまた
「その仕事、本当に儲かってる?」
と自問自答して、次の一手を考えましょう^^
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