会社を設立してから事業の収益が増え、会社に預金がたくさん貯まりました。
一方、個人の方は主に役員報酬で移さないと増えません。
役員報酬を増やしすぎると税金も社会保険料も増えるので、ひかえめにしていました。
そんな役員報酬の手取りから住宅ローンを返済していました。

不動産投資の勉強しているときに
「自分は不動産投資向いてないなあ」
と思っていたのですが、ふと
「自宅を会社が買ったらいいじゃないか」
と気づきました。
※不動産投資と社宅化の比較は次の記事で詳しく書いています。
関連>>【比較】自分が不動産投資より持ち家の社宅化を優先した3つの理由
建物部分だけを会社に売る。
早速、持ち家を会社で買うとどうなるかを計算しました。
まず持ち家といっても
- 建物部分
- 土地部分
の2つに分かれます。
両方とも会社に売ることもできますが、「減価償却」という観点から言うと
- 建物部分:減価償却可能(経費になる)
- 土地部分:減価償却不可
と異なります。
住宅ローンの返済を考えても土地部分を含める必要がなかったので
- 建物部分:個人から会社に売却
- 土地部分:個人でそのまま所有
としました。
※建物部分の売却価格は適正価格にする必要があるので、実行するときは顧問税理士に相談しましょう。
※個人の所有する土地については、税務署に「土地の無償返還に関する届出書」を提出して、地代を会社から受け取っています。
売ったお金で住宅ローンを完済する。
次に、売ったお金で住宅ローンを完済しました。

そもそも住宅ローンは「個人」が住宅を購入するために銀行から借りているものです。
住宅の所有者が「会社」になると、銀行としては「話が違う」となります。
しかし、住宅ローン自体を完済してしまえば、銀行との関係は終わって文句を言いようがありません。
住宅ローンを完済し、銀行の抵当権抹消登記も自分でしました。
なお、建物部分だけの売却で住宅ローンの完済資金が足りなければ、土地部分も一緒に売っていたと思います。
社宅にして家賃を会社に払う。
住宅の建物部分の所有者は「自分の会社」です。
「社長個人」としては会社から家を借りる形になります。
社宅です。
家を借りているので社長個人から会社に社宅家賃を支払います。

一見すると意味がないように見えますが
- 家賃といっても一般的な賃貸価格より安いので負担が少ない
- 他人に払う家賃と違って自分の中でお金を回しているにすぎない
ので、建物部分が経費になっていることと合わせてお金の流れが良くなります。
※社宅家賃は一定額(賃貸料相当額)を支払う必要があります。
※金額によっては社会保険料(現物給与)の算定に影響が出る場合があります。
減価償却費や経費で節税になる。
会社は社宅家賃が収入になるのでその分だけ税金が増えるんじゃないか、と思うところです。
しかし実際には、会社で落とせる経費がかなり増えます。
- 建物部分の減価償却費
- 建物部分の固定資産税・都市計画税
- 個人に支払う地代(土地部分の賃料)
- 火災保険料
- 地震保険料
- 修繕費 など
それまでは役員報酬から住宅ローンや税金・保険料を払っていましたが、これは「税引き後のお金」です。
持ち家を社宅化すると「税引き前のお金」から支払いができます。
自分が使えるお金が実質的に増えていることになります。
この方法のデメリット
メリットしかないように見えますが、もちろんデメリットもあります。
1) 会社に買える現金がないと使えない。
最大の壁が「現金で買えるかどうか」です。
個人なら住宅ローンがありますが、会社が買おうとすると銀行借入が厳しいです。
そうすると、現金一括購入になります。
自分の会社はたまたま預金があったので実現可能でしたが、ふつうここで断念します。
会社の資金繰りが苦しくなったら本末転倒です。
2) 登記費用や不動産取得税がかかる。
個人から会社に移すときにどうしても登記費用(登録免許税含む)と不動産取得税がかかります。
会社が負担するのでデメリットというより節税メリットがこの分だけ減るという感じでしょうか。
私が土地部分を会社に移さなかったのも、土地部分に対する登記費用と不動産取得税が発生するのがもったいないと思ったからです。
3) 住宅ローン返済より投資した方がリターンは大きいかも。
住宅ローン金利は1%だったので、無理に返済しないという選択肢もありました。
会社で例えば不動産投資や株式投資をして、1%を超えるリターンを得るということですね。
ただ、それだと個人にお金が動かないと思いました。
住宅ローンはもともと繰上返済しまくっていたので、早く終わらせたいという思いで会社に売ることにしました。
なお、たまたまコロナショック直前(2020年1月)に住宅ローンを完済したので、コロナショックで暴落したときにはとても心穏やかでした。
「自分は投資の前に住宅ローン完済だったな」
と再認識しました。
※住宅ローン控除が受けられる期間中に売ると住宅ローン控除が使えなくなるので、その点も含めて有利不利を考える必要はあります。
4) 出口をどうするかを考える必要がある。
持ち家の社宅化の1番のメリットは建物部分の減価償却費が取れることですが、耐用年数が経過すれば経費化できる部分はゼロになります。
その後も固定資産税・火災保険料などは会社で経費にできますが、節税メリットとしては落ちます。
選択肢としては
- 個人が買い戻す
- 他人に売る
のいずれかになるかと思います(取り壊さないなら)。
ここをどうするかを考えておく必要があります。
個人が買い戻すときは、また登記費用と不動産取得税がかかります。
5) 相続財産の計算が変則的になる。
相続が発生した場合、ふつうは持ち家が相続財産になります。
しかし社宅化すると建物部分は会社が持っているので、相続財産である「会社の株式」の一部を構成することになり、ややこしくなります。
また、土地部分について小規模宅地の特例が使えるかどうかも確認した方がいいですね。
いずれにしても専門的な世界なので気になる方は顧問税理士に聞いてみてください。
まとめ
ざっくり書いたので、細かいことは他の記事で書こうと思っていますが
- 事業で会社に資金が貯まる
- 個人に役員報酬以外の方法で移したい
- 持ち家の建物部分を会社に売る
- 会社から売却資金をもらう
- 売却資金で住宅ローンを完済する
- 社宅家賃を会社に払う
- 建物部分の減価償却費や税金・保険料を会社の経費にする
というのが一連の流れです。
デメリットとしては
- 会社に買える現金がないと使えない。
- 登記費用や不動産取得税がかかる。
- 住宅ローン返済より投資した方がリターンは大きいかも。
- 出口をどうするかを考える必要がある。
- 相続財産の計算が変則的になる。
あたりだと考えています。
関連>>【比較】自分が不動産投資より持ち家の社宅化を優先した3つの理由