今回は「米国株(個別株,ETF)」を「売却益」メインで持つ場合に、個人口座と法人口座のどっちで持つのが得かまとめました。

個人口座と法人口座の比較
- 日本株で売却益
- 日本株で配当金
- J-REITの分配金
- 米国株で売却益←ココ
- 米国株で配当金
米国株の売却益は、日本株の売却益と基本的に同じです。
為替(ドル)の影響は受けますが、配当金と違って現地で米国の税金が源泉徴収されません。
最初に結論を書くと次のとおりです。
個人口座がおすすめの人
- NISAを利用する人
- 会社の利益が多い人
- ひんぱんに米国株の売買をする人
法人口座がおすすめの人
- 会社の経費と相殺する目的の人
- 超ハイリスクな銘柄に投機したい人
基本的には「個人口座」がおすすめ
個人口座で持った方が得な人
まずは個人口座で持った方が得な人を見ていきましょう。
1.NISAを利用する人
個人口座では「NISA(少額投資非課税制度)」が利用できます。
税金がゼロになる仕組みは、法人口座にはありません。
今回は米国株への投資なので「一般NISA」が使えます(つみたてNISAは使えません)。
- 個人口座(特定口座):課税(一律20.315%)
- 個人口座(一般NISA):非課税
一般NISAを利用すると年間120万円まで投資でき、5年以内の売却益は非課税です。

日本株は最低単元株が100株※で1銘柄で数十万円使ってしまうものもありますが、米国株は1株から買えるので、120万円の枠ギリギリまで買いやすいメリットがあります。
※1株単位(単元未満株)でNISAを利用できるSBI証券などを使うという手もあります。
また、2024年から「新しいNISA」が始まりますが、こちらは少し減って年間102万円まで投資でき、5年以内の売却益は非課税です。
細かい制度の話はさておき
- 年間で100万円前後くらいしか投資しない
- つみたてNISAを利用しない
なら一般NISA(2024年からは新しいNISA)で十分です。
2.会社の利益が多い人
会社の利益が多い人も、個人口座がおすすめです。
<税率と計算方法>
- 個人口座:一律20.315%(申告分離課税)
- 法人口座:約23~34%前後(全部まとめて計算)
米国株の売却益は、「申告分離課税」といって他の所得(例:給与所得、事業所得、不動産所得)とは別にして計算します。
しかも税率はどれだけ売却益があっても約2割です。
一方、会社で米国株を売るときは最低でも約22%(法人税・法人住民税・法人事業税)の税金がかかり、この時点で個人より税率が高いです。
さらに他の利益とまとめて計算するので、会社の事業が儲かって利益がたくさんあれば、税率は約34%です。
個人で持つより1割以上税金の負担が増えてしまいますね。
3.ひんぱんに米国株の売買をする人
最後に、ひんぱんに米国株の売買する人も個人口座がおすすめです。
<誰が計算するか?>
- 個人口座(特定口座):証券会社が自動で計算
- 法人口座:自分で仕訳を入力して帳簿をつけて計算
多くの人は特定口座(源泉徴収あり)を選んで取引を行っていると思います。
特定口座は、証券会社が自動で計算をしてくれます。
日本の上場株式と同じ扱いです。

一方、法人口座には特定口座はありません(一般口座のみ)。
証券会社が発行する取引の明細をもとに会計ソフトに入力して、売却益・売却損を計算します。
円をドルに替えて買い付けをするとさらに仕訳は増えていきます。
実際にやってみるとわかりますが、結構手間です。
取引の明細と残高が合わなくて、ムダな時間を過ごしたことがあります…
クラウド会計ではネットバンキング(銀行)などと連携して、データから自動的に仕訳を作ってくれますが、証券会社との連携はありません(できるソフトがあればぜひ教えてください)。
法人口座は、ひんぱんに米国株の売買をすればするほど、会計ソフトの方で手間が増えていきます。
「税理士に依頼すればいいじゃないか」
という意見もあると思いますが、仕訳が多くなると別料金を取るケースもよく見かけます。
法人口座でひんぱんに米国株を売買する必要があるのか、考えたいところです。
法人口座で持った方が得な人
次は、法人口座で持った方が得な人を見ていきましょう。
1.会社の経費と相殺する目的の人
個人口座で売却益と相殺できるのは、基本的に「米国株(日本株でもOK)の売却損」だけです。
一方、法人口座は「全部まとめて計算」します。
売却損はもちろん、「会社が支払う経費」も相殺できます。
例えば個人事業主がマイクロ法人を作って二刀流をするケースで、これが活用できます。
マイクロ法人でよくあるのは米国株を持たせて、「配当金(分配金)」と経費を相殺する方法ですが、売却益とも相殺できます。
売却益の場合、益出しをするタイミングを選べるので、次のようなこともできます。
- 固定費:配当金と相殺
- イレギュラーな経費:一部売って売却益と相殺
実際には、売却益になるか売却損になるかはそのとき次第なので、こんなにうまくいきませんが
- 配当が少ない月に配当代わりに益出し
- 期末の利益と相殺するために損出し
- 期末の損失と相殺するために益出し
など、柔軟に動くことができます。
2.超ハイリスクな銘柄に投機したい人
個人口座で年間トータルで赤字になったときは、3年間、損失の繰り越しができます。

3年の間に米国株(日本株でもOK)の売却益や配当金と相殺できない場合は、損して終わりです。
一方、法人口座は10年間繰り越せます。
超ハイリスクな銘柄に投機をしたい人が法人口座を使う場合もあります。
もし多額の損失が発生しても、10年の間に本業の利益と相殺できればいいからですね。
逆に「1年前の利益」と相殺する「欠損金の繰戻し還付」という制度もあるので税理士にご確認ください。
ただ、法人口座でドカンと売却益が出る場合は最大34%で個人より税負担は重い点は注意が必要です。
参考:米国株の含み益は?為替は?
「法人口座で米国株を持つと、期末に含み益に課税されるのでは?」
という疑問を持つ人もいるかもしれません。
ただし、ほとんどの中小企業では、貸借対照表の「固定資産」の「投資その他の資産」の中で「投資有価証券」としているので、含み益(評価益)に課税はありません。
また、「外貨建ての資産なので期末に為替を反映するかどうか」についても特に何もしなくてOKです(発生時換算法)。
まとめ
「売却益」メインなら、個人口座と法人口座どちらで「米国株」を持つのが得かについて見てきました。
個人口座がおすすめの人
- NISAを利用する人
- 会社の利益が多い人
- ひんぱんに米国株の売買をする人
法人口座がおすすめの人
- 会社の経費と相殺する目的の人
- 超ハイリスクな銘柄に投機したい人
トータルで考えると個人口座がおすすめです。
個人口座と法人口座の比較
- 日本株で売却益
- 日本株で配当金
- J-REITの分配金
- 米国株で売却益←ココ
- 米国株で配当金
<本の紹介>
米国株投資についてはたぱぞうさんの本がおすすめです。