今回は「米国株(個別株,ETF)」を「配当金」メインで持つ場合に、個人口座と法人口座のどっちで持つのが得かまとめました。

個人口座と法人口座の比較
- 日本株で売却益
- 日本株で配当金
- J-REITの分配金
- 米国株で売却益
- 米国株で配当金←ココ
最初に結論を書くと次のとおりです。
個人口座がおすすめの人
- NISAを利用する人
- 会社の利益が多い人
法人口座がおすすめの人
- 会社の経費と相殺する目的の人
- 収益の柱を増やしたい人
目的次第で個人も法人もどっちもアリ!
結論は「J-REITの分配金」と同じです。
関連>>【J-REIT投資】分配金メインなら個人口座と法人口座どっち?
米国株の配当金はアメリカの源泉税がかかる
個人口座と法人口座を比較する前に確認したいのが、それぞれに対する源泉徴収です。
まず現地でアメリカの税金が「10%」源泉徴収されて、残り(9割相当)に対して日本の税金が源泉徴収さるのが特徴です。
<個人口座と源泉徴収>
- 日本株/米国株の売却益:日本の源泉税20.315%
- 日本株の配当金:日本の源泉税20.315%
- 米国株の配当金:アメリカの源泉税10%と日本の源泉税20.315%→実質28.3%
<法人口座と源泉徴収>
- 日本株/米国株の売却益:なし
- 日本株の配当金:日本の源泉税15.315%
- 米国株の配当金:アメリカの源泉税10%と日本の源泉税15.315%→実質23.7%
※法人口座では住民税5%は源泉徴収されないため所得税15.315%のみ
米国株に対する配当金が10万円あるとすると、次のようになります。
<個人口座>
- アメリカの源泉税:10万円×10%=1万円
- 日本の源泉税:(10万円-1万円)×20.315%=1万8,283円
- 合計28,283円(実質28.3%)
<法人口座>
- アメリカの源泉税:10万円×10%=1万円
- 日本の源泉税:(10万円-1万円)×15.315%=1万3,783円
- 合計23,783円(実質23.7%)
これを踏まえた上で、個人口座と法人口座について見ていきましょう。
個人口座で持った方が得な人
まずは個人口座で持った方が得な人について見ていきましょう。
1.NISAを利用する人
個人口座では「NISA(少額投資非課税制度)」が利用できます。
この税金が非課税になる仕組みは、法人口座にはありません。
今回は米国株への投資なので「一般NISA」です(つみたてNISAは使えません)。
<個人口座>
- 特定口座:課税(日本の源泉税20.315%)+アメリカの源泉税10%
- 一般NISA:非課税+アメリカの源泉税10%
一般NISAを利用すると年間120万円まで投資でき、5年の間にもらう配当金に対する「日本の税金」は非課税です。
ただし、NISAを使っても「アメリカの源泉税」は非課税になりません。
一般NISAを利用したとしても、必ず10%の税金※がかかります。
※NISAは、確定申告ができないので外国税額控除が使えません。

また、2024年から「新しいNISA」が始まりますが、こちらは少し減って年間102万円まで投資でき、5年の間にもらう配当金は非課税です。
細かい制度の話はさておき
- 年間で100万円前後くらいしか投資しない
- つみたてNISAを利用しない
- アメリカの源泉税10%がかかっても構わない
なら一般NISA(2024年からは新しいNISA)で十分です。
ただし、後で紹介するように、会社が「赤字」の場合は「アメリカの源泉税10%だけ」になり、疑似的にNISAと同じ状態を作ることができます。
2.会社の利益が多い人
会社の利益が多い人も、個人口座がおすすめです。
個人が米国株の配当金を受け取るときは、3つの選択肢があります。
- 申告不要
- 申告分離課税
- 総合課税
下記の図は「日本の上場株式」の配当金に関する図ですが、米国株でも基本は同じです(違いはアメリカの源泉税10%が先に源泉徴収される点)。

米国の配当金に対する税率は、最初に説明したように実質28.3%です。
総合課税や申告分離課税を選んでアメリカの源泉税について外国税額控除という制度が使える場合は、もう少し税率が下がります。
一方、会社の事業が儲かって利益がたくさんあれば、税率は最大で約34%です。
※源泉徴収される税率は実質23.7%と個人より低いですが、「全部まとめて税金を再計算する」ので、会社の場合、源泉徴収される税率に意味はありません。
<税率>
- 個人口座:実質28.3% ※1
- 法人口座:最大34% ※2
※1 個人は外国税額控除を使うと税率がもう少し下がる場合があります。
※2 会社でもアメリカの源泉税について外国税額控除が使えますが、個人と違ってトータルの税金を減らす効果はありません。受取配当益金不算入制度も使えません。
ただし、後で紹介するように、会社が「赤字」の場合は「アメリカの源泉税10%だけ」になる場合があります。
参考:日本株の配当金との比較
「日本株」の配当金は、次の特徴があります。
- 個人口座では課税所得900万円以下の人の場合、総合課税で配当控除が使えて税率が20%未満になる→有利
- 良い日本株の高配当ETFがなく、分散しようとすると個別株を大量に管理する必要があるが、個人口座は証券会社が自動で計算をしてくれる→簡単
上記の理由で「日本株」の配当金は、「個人口座」をおすすめしています。
一方、「米国株」の配当金には
- 総合課税を選択しても配当控除がない
- 優良な米国高配当ETF(例:VYM,HDV,SPYD)を利用すれば分散投資ができるので、活用すれば手間はそれほどかからない
ため、個人口座を選ぶメリットが減ります。
法人口座で持った方が得な人
次は、法人口座で持った方が得な人を見ていきましょう。
1.会社の経費と相殺する目的の人
個人口座で配当金と相殺できるのは、基本的に「米国株(日本株でもOK)の売却損」だけです。
一方、法人口座は「全部まとめて計算」します。
売却損はもちろん、「会社が支払う経費」も相殺できます。
例えば個人事業主がマイクロ法人を作って二刀流をするケースで、これが活用できます。
マイクロ法人のように事業で稼ぐことを目的としていない場合は、税率も最大の34%ではなく23%です。
さらに経費と相殺して利益を残さない場合、赤字の場合は、法人税がかからず、アメリカの源泉税10%だけ※かかります。
※赤字の場合、アメリカの源泉税について外国税額控除が使えないため、最低でも10%はかかります。
つまり、日本の源泉税(15.315%部分)は還付してもらえるのです。
疑似的に個人のNISAと同じ状況を作ることができます。
<米国株の配当金と税率>
- 個人口座(一般NISA):アメリカの源泉税10%だけ
- 法人口座(会社が赤字):アメリカの源泉税10%だけ
2.収益の柱を増やしたい人
もう1つ、本業以外に会社の収益の柱を増やしたいときに使えます。
本業が順調なときは税金の負担が個人よりやや重いというデメリットはありますが、本業が悪いときには貴重な収入源になります。
ただし、3,000万円投資して利回り4%でやっと年間120万円(月10万円)です。
収益の柱にするには「かなりの金額」を投資する必要があります。
よほど使わない資金がない限りは、微妙なところです。
ムリに株式投資をするより
- 別の事業(収益の柱)を作るために投資
- 融資を受けて不動産投資(家賃収入)
も検討したいところです。
参考:米国株の含み益は?為替は?
「法人口座で米国株を持つと、期末に含み益に課税されるのでは?」
という疑問を持つ人もいるかもしれません。
ただし、ほとんどの中小企業では、貸借対照表の「固定資産」の「投資その他の資産」の中で「投資有価証券」としているので、含み益(評価益)に課税はありません。
また、「外貨建ての資産なので期末に為替を反映するかどうか」についても特に何もしなくてOKです(発生時換算法)。
まとめ
「配当金」メインなら、個人口座と法人口座どちらで「米国株」を持つのが得かについて見てきました。
米国株の配当金は、目的によってお得感が全然違います。
個人口座がおすすめの人
- NISAを利用する人
- 会社の利益が多い人
法人口座がおすすめの人
- 会社の経費と相殺する目的の人
- 収益の柱を増やしたい人
判断基準は次のとおりです。
- 会社の利益が多い→個人口座で
- 会社の利益が少ないかゼロ→法人口座で
他のケースでは「個人口座」を基本的にはおすすめしていますが、米国株の配当金については目的次第と考えます。
個人口座と法人口座の比較
- 日本株で売却益
- 日本株で配当金
- J-REITの分配金
- 米国株で売却益
- 米国株で配当金←ココ
<本の紹介>
米国株投資についてはたぱぞうさんの本がおすすめです。