もし売上がゼロになっても、手元のお金で「何か月」やっていけるか知ってますか?
北の達人コーポレーション代表取締役社長の木下勝寿氏が書かれた『売上最小化、利益最大化の法則』です。
北の達人コーポレーションは上場企業です。
健康食品・化粧品の自社ブランド「北の快適工房」のネット販売が主な事業になっています。
「なんだ、大きな会社の話か」
と思うかもしれませんが、そんなことはありません。
この中から「小さな会社」でも使える
- 無収入寿命
という考え方についてご紹介したいと思います。
「無収入寿命」とは、ざっくり言えば
もし売上がゼロになっても、手元のお金で何か月やっていけるか
を表したものです。
自分で事業をやっている人なら
「売上ゼロになったらどうしよう」
という不安を持ったことは1度はあるでしょう。
そのときに「漠然したお金の不安」があるのと
「売上ゼロでも30か月(2年半)はやっていける」
と「具体的な数字」で知っているのとでは、大違いです。
これは会社が大きいか小さいかは関係ありません。
会社が死ぬときは赤字になった時ではありません。
お金がなくなったときです。
「無収入寿命」について、木下社長が語る動画も公開されているので、こちらもぜひご覧ください。
無収入寿命とは?
無収入寿命の計算式は次のとおりです。
純手元資金
ーーーーーーーー = 無収入寿命
月額固定費
具体的な数字を入れてみてみましょう。
例1)
- 純手元資金:1,000万円
- 月額固定費:50万円
- 無収入寿命=1,000万円÷50万円=20か月
売上ゼロになっても20か月(1年8か月)、なんとかやっていけます。
例2)
- 純手元資金:1,000万円
- 月額固定費:20万円
- 無収入寿命=1,000万円÷20万円=50か月
売上ゼロになっても50か月(4年2か月)、なんとかやっていけます。
純手元資金が同じ1,000万円だとしても、月額固定費が違うので例1(20か月)より例2(50か月)の方が無収入寿命が長いですね。
純手元資金とは?
純手元資金は、すぐに使えるお金のことです。
次のように計算します。
純手元資金=総資産-固定資産-棚卸資産-流動負債
※固定資産:土地、建物など資産だけどすぐ現金化できないもの
※棚卸資産:商品在庫など売上が止まれば現金化できないもの
※流動負債:買掛金、短期借入金などすぐに返さないといけないもの
「う~ん、なんか難しい>_<」
という人は、貸借対照表から
- 現金及び預金
- 売掛金
の2つの金額を拾って足せば、だいたい近い金額になります。

月額固定費は?
月額固定費は、家賃、人件費、光熱費など売上ゼロでも必ずかかるコストのことです。
売上がなくても固定費を払えるなら、会社は存続します。
「どの費用が固定費かわからない>_<」
という人は、損益計算書の「販売費及び一般管理費(販管費)」の金額でもOKです。

※法人住民税の均等割7万円が販管費(租税公課)に含まれていない場合は、追加するとなお良いでしょう。これは赤字になっても払う税金だからです。
無収入寿命を計算してみよう。
純手元資金と月額固定費がわかったら、実際に「無収入寿命」を計算してみましょう。
無収入寿命の計算式は次のとおりでしたね。
純手元資金
ーーーーーーーー = 無収入寿命
月額固定費
ざっくり計算するなら、直近の決算書のから次の金額を拾うだけです。
- 貸借対照表→「現金預金」+「売掛金」=(1)
- 損益計算書→「販売費および一般管理費」を12で割る=(2)
- (1)÷(2)=無収入寿命(○か月)
本のとおりにしっかり計算するなら、次のとおりです。
- 純手元資金(1)=総資産-固定資産-棚卸資産-流動負債
- 月額固定費(2)=家賃、人件費、光熱費など売上ゼロでも必ずかかるコストを合算
- (1)÷(2)=無収入寿命(○か月)
使い方1:変化するための余裕がわかる
さて、無収入寿命が計算できたでしょうか。
無収入寿命を計算しただけでは意味がないので、使い方のご紹介です。
ここからは私が小さな会社向けに考えた使い方です。
1つ目は変化するための余裕がわかる点です。
例えばアフィリエイトの世界では、2019年から2020年5月までの間にSEOのルールが大きく変わりました(Googleコアアップデート)。
SEOに集客方法を依存していた人は、一気に売上が減りました。
それでもすぐにアフィリエイターが路頭に迷わなかったのは、使えるお金(純手元資金)が豊富にあったからです。
もともと売上が翌月または翌々月に入金されるアフィリエイトの世界は、どんどん預金が積み上がっていきます。
だから大きな変化があっても
- SNSなど別の集客方法に切り替える
- 不動産投資や別事業にシフトする
と、変化するための余裕がありました。
例えば無収入寿命が「20か月」なら、1年かけて変化してもお金は残ります。
変化するための余裕があることは、気持ちの余裕につながります。
使い方2:逃げ切り計算ができる
純手元資金がたくさん積み上がってくると、計算上、次のようなことが起こります。
例3)
- 純手元資金:1億2,000万円
- 月額固定費:40万円
- 無収入寿命=1億2,000万円÷40万円=300か月(25年)
Googleコアアプデ前に稼いでいたアフィリエイターさんは、無収入寿命が一般企業からするとバグっています。
例えば現在40歳だとすると、25年後は65歳です。
- 40歳~64歳(25年間):会社の資金を切り崩して役員報酬で生活
- 65歳以降:年金生活
このように計算をすると気づきます。
「あれ? もう売上を増やさなくても人生逃げ切れるんじゃないか」
もし足らなくても、多少働けばすむことです。
固定費がもう少し多い場合はどうでしょうか。
例4)
- 純手元資金:1億2,000万円
- 月額固定費:50万円
- 無収入寿命=1億2,000万円÷50万円=240か月(20年)
年金生活まで逃げ切れない場合としても、残り何年働けば逃げ切れるかを知ることができます。
- 40歳~43歳(5年間):会社の資金を減らさないよう損益トントンの売上を稼ぐ
- 44歳~64歳(20年間):会社の資金を切り崩して役員報酬で生活
- 65歳以降:年金生活
この場合は、5年働く必要があることがわかります。
本では純手元資金=「現金預金」でしたが、ひとり会社の場合はすべて現金預金で持つ必要はありません。
すぐに使わないお金(例えば5年目以降に使う分)は
- 株式
- 投資信託
- 債券
など換金性の高い資産で運用して増やすのもアリだと考えます。
自分もすぐ使わないお金は株式投資に回しています。
不動産投資に使うのもよいでしょう。
最後に
今回は「無収入寿命」についてご紹介しました。
「自分の会社」が売上ゼロでも何か月生き残れるか、ぜひ計算してみてください。
そして、毎年の決算が終わったら、無収入寿命を再計算しましょう。
一度Excelで計算式を入れておけば、数字を置き換えるだけで簡単に計算できます。
「無収入寿命」は、あくまで今回紹介した本の一部の話です。
もっと詳しく知りたいという方は、ぜひ本を手に取ってみてください。